サザンカ2 (ページ6)

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たった一人のページ6

草介side

母さんが亡くなってから、俺が料理担当になった。

父さんは、食べてくれたけど、花斗は...

ーーーやだ！いやだ！お母さんのやつじゃなきゃやだ！！僕、食べないから！！

ブンブン頭を振る花斗の首には、俺が母さんから貰ったお守りがぶら下がっていた。

そのお守りは、無残に右へ左へ揺れていた。

もう6歳だというのに、小さい子みたいに駄々をこねる花斗を見て、俺は頭を悩ませた。

花斗からすれば、いきなり母親が居なくなって、不安だっただろうし、食べ慣れていない兄の料理なんて、尚更嫌だったと思う。

『花斗！食べないと大きくなれないよ！それに、勉強も運動も食べないとやっていけないんだよ！ほら、口開けな！』

ーーーい～や～だぁ～！！！お母さんの...っ、お母さんのがいい～！！うっ...うわぁ～ん！！

泣いてる花斗の口をこじ開けるのは、俺には不可能だった。

だから、母さんに教えてもらった、たった一つの料理を毎回作ってやった。

ーーーグスッ...これって...お母さんの...

『豚カツだよ。これでも、食べられない？』

花斗はようやく、俺の料理に手を付けた。

ーーー...美味しい。ううっ、美味しいっ...

花斗は、それを食べる度に、泣いていた。

それと同時に、ギュッと母さんのお守りを握りしめていた。

大好きだった母さんを、思い出していたのか。

弱々しく泣く花斗を見て思った。

ーーーこれからは、僕が守らないと駄目だ。

たった一人の弟。

弱虫で泣き虫だけど、それでも大切な俺の弟だ。

10歳の頃、喘息になってしまってからも、花斗に料理を作り続けた。

喘息のことは、今でもバレていない。

正直、奇跡だと思う。

それが、今の俺の誇り。

その全てが、今の俺を形作っている。