弟からの手紙 ページ33
尊敬する兄ちゃん、茶山 草介へ
書き出しにこんなこと言うのは、失礼かもしれないけど、言わせてほしい。
兄ちゃんは、本当は俺に出て行って欲しくないって思っていたんだろう？
これが俺の勝手な思い込みだったら、本当にごめん。
ただ、兄ちゃんがもしそう思っているのなら、伝えたいことがあるんだ。
もう俺の為だけに、料理を作ろうと思わないで欲しい。
俺が出て行ったら、兄ちゃんは料理を作ることが無くなってしまう。
兄ちゃんは基本、俺にしか料理を作らないから。
勝手なんだけど、兄ちゃんはずっとそれを恐れていたんだと思う。
だけど、それでも兄ちゃんは俺の夢を優先してくれた。
兄ちゃんの、その特別な思いを、ほかの誰かに向けてくれないかな。
俺じゃなくて、ほかの誰かの為に、兄ちゃんの料理を作ってあげて欲しい。
兄ちゃんの料理は本当に美味しいから、きっと喜んで食べてくれる人はたくさんいる。
留学中、どんな思いをしたのか分からない。
俺が想像するより、酷い言葉を浴びせられたこともあるかもしれない。
だけど、どうか恐れないで。
兄ちゃんの料理は、人を笑顔にする力がある。
俺が言うんだから、絶対間違いないよ！
だから、何が言いたいのかっていうと、兄ちゃんにも才能はある。
料理の才能がちゃんとある。
俺が、ずっと羨んでたすごい才能があるんだ。
その才能を、自分から潰しちゃ駄目だ。
兄ちゃんの望み、叶えたんだからさ。俺の望みも、叶えてくれていいでしょう？
卑怯なこと言ってごめんなさい。
最後になるけど、本当に今までありがとう。
兄ちゃんがいなかったら、絶対に賞を貰うなんて出来なかった。
あっちに行ったら、自分なりの絵を描き続けようと思う。
新しい場所でも、頑張ってみるよ。
落ち着いたらまた帰省するから、その時は兄ちゃんの元気な姿を見せてね。
それじゃあ、また。
茶山 花斗より
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作者名：ロク | 作成日時：2018年11月17日 17時
