サザンカ2 (ページ31)

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またねページ31

花斗side

今日でこの家を出て行く。

俺は何度も、何度も考えて泣いて

兄ちゃんと自分の夢を、天秤にかけたのに

兄ちゃんは、出て行けって言うんだ

でも、もう決まったこと。

これが、兄の望んでいることだ。

だけどさ...俺が出て行くっていうのに

何でそんな泣きそうに笑ってるんだよ...？

玄関から出る。

振り返れば、兄と過ごした家の姿。

もうこの家を見るのも、何年か後になるんだな

目の前には、兄ちゃんが優しい顔で立ち尽くしている。

...少し、泣きそうな顔とも言えるけど。

そんな思いを隠しながら、俺は兄ちゃんに言った。

「...今まで、ありがとう。たくさん迷惑かけて、本当にごめん...けど、ありがとう。」

『そんな、俺の方こそ...ありがとう。花斗。向こうに行っても、ちゃんと食べなよ？あと...爆発させたり、焦がしたりすんなよ～』

「なっ...そんなことするわけないだろっ、馬鹿にしてるじゃん...はぁ、やっぱ兄ちゃんは、最後まで兄ちゃんだなぁ。」

『どういう意味だい？』

「そのまんまですけど？」

俺達はムッと睨み合い

『「フフッ/アハハッ」』

お互いに、可笑しそうに吹き出した。

『無理すんなよ、じゃあ、また。』

「わかってる、じゃあ...またね。」

軽く手を振って、俺はトラックへ乗り込んだ。

窓の外を見れば、兄ちゃんがニッと笑ってピースサインをする。

...結局、兄ちゃんが本当は、どう思ってるのか聞けなかったな。

でも、もう遅いか...

そうだ、気づいてくれたらいいな

さっき、部屋に手紙を置いてきたから、読んでくれたら...

と思ってたら、トラックが前進した。

兄ちゃんは、少しだけトラックを追いかけて、ずっと俺に手を振ってくれた。

...ああもう、走らなくていいのに、発作が出たらどうすんだよ

でも、俺も兄ちゃんの姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り返した。

8月の暑い日。

俺は長年暮らしていた家を出て行った。