夢と兄 ページ29
花斗side
目の前が真っ暗になった。
何度も、何度も悩んだ。
やっと掴んだ夢を手放す...
けど、最終的に兄ちゃんのためなら、諦めようって思えたんだ。
何より、もう兄ちゃんに辛い思いをさせたくなかった。
それなのに...どうして
『花斗、俺が辛い思いをするのは、一番嫌だって言ってくれたよね。』
「.........うん」
『俺にとって一番辛いことは、花斗の夢が叶わないことなんだ。だから、この望み叶えてくれる?』
ああ、だからこの人には、いつも敵わないんだな
俺は呑気に、そんなことが頭に浮かんだ。
『しっかりしなよ。東京にアトリエを構えるって言ってたじゃん。暗い顔すんなって...出ていく前に、料理ぐらいなら教えるからさ。』
「それさ...俺、何にも返せてないじゃん...」
情けないや
ずっと、支えられてばっかりだ...
「うあぁあああ......」
泣いて頭を抱えた俺を、兄ちゃんはそっと抱きしめてくれた。
『そんなの返さなくていいよ。花斗は、俺に縛られる必要はないんだから。広い世界に出て、自由になれる...けど、たまには帰っておいで。』
その優しい言葉に、俺は情けなくなって、更に新しい涙を零した。
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作者名:ロク | 作成日時:2018年11月17日 17時