サザンカ2 (ページ27)

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弱い自分ページ27

花斗side

「兄ちゃん、本当に馬鹿だなぁ。」

『...花斗、なんで？』

聞き慣れた兄ちゃんの声が、すぐそばで聞こえる。

...あったかいなぁ

『どうして、俺を抱きしめるんだよ...お前にたくさん嘘をついて、騙してきたのに...なんで？』

俺は兄ちゃんの背中に回していた手で、なだめるように、背をさすった。

「嘘をついて、騙してきたのは、兄ちゃんだけじゃない。」

「実は俺さ、あんまり明るい性格じゃないんだ。すぐ落ち込むし、グズグズ悩むし。」

「兄ちゃんの前ではそんなの見せたくなくて、辛い時でも、馬鹿みたいに明るく振舞ってた。そうしないと...兄ちゃんは俺に料理を作ってくれないかもって思ってたんだ。」

こう言ったあと、兄ちゃんは小さく震えて、俺の背中に腕を回してくれた。

初めて吐露した自分の本心。

本当は暗くて、嫉妬深い自分を、受け入れてもらえるのか...すごく不安だ

「兄ちゃんの料理は毎日美味しくて、いつも力をもらってたよ...だけど、嫉妬してた。兄ちゃんだけ、才能を持ってる。俺だけが何の才能も持たない役立たずで。」

『花斗！それは違う。花斗には、ちゃんと絵の才能が...』

「うるさい！...聞いて。」

怒鳴り声に肩を震わせても、俺の背中に回された手は離されていない。

だけど兄ちゃんと向き合うために、俺は静かに身体を離した。

「俺は、兄ちゃんといると辛い。いつも、自分の心が劣等感で壊れそうになるから。」

目の前にいる兄ちゃんの目が、大きく開かれる。

「...だけど、兄ちゃんが傷ついて、壊れてしまうのは、もっと辛いんだ。」

兄ちゃんの目から、ボロボロ大粒の涙が溢れでてくる。

どうして、もっと早く言ってあげなかったんだろう。

今まで、ずっと喘息の発作を抑えて、俺のために料理を作ってきてくれたというのに。

きっと何回も発作で苦しんだ日もあったはずだ。

もう、あんなに苦しそうな兄ちゃんを見るのは、心が耐えられそうにない。

どうして、もっと早くに...

「ごめんなさい兄ちゃん。ずっとわかってたのに...っごめんなさい...」

兄ちゃんの肩に顔を押し付けて、子どものように泣いた。