オドントグロッサム (ページ16)

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樹くんと一緒に帰っていると、前に一人で歩いているジェシーくんが居た。

気付いていないはずないのに、樹くんは見ていないフリをして明らかに避けるように別の道で曲がった。

北「樹くん…？」

樹「ん？」

控えめに声をかけると、いつもと同じように俺の方を見て返事をする。

北「ジェシーくんと、何かあったの？」

ずっと仲良しだったのに、俺が気付かなくてもジェシーくんに気付くぐらいジェシーくんの事が大好きで大切だったのに、明らかに避けるのは何かあったとしか思えない。

樹「…何もないよ」

今までとは違う冷たいトーンでそう言った樹くん。

その様子で何かがあったことは分かった。

北「Ｊ２の噂聞かなくなったんだけど、会ってすらないってことは無いよね…？」

その質問には、樹くんはしばらく無言を貫いた。

樹「今会ったら、あいつのこと傷付けるから」

北「…え？」

二人のことだから、またお菓子のひとつとかそんな小さなことで喧嘩でもしているんだと思っていた。

さっき聞いたのも、半分ネタだった。

だから、こんな真剣な返事が返ってくるとは思わなくて驚く。

樹「まぁ、こんな態度とってる時点で傷付けてるとは思うけど。俺があいつに頼らなくてもやっていけるようにならないとあいつにばっかり迷惑かけるから。もうあいつに苦しい思いして欲しくないから」

北「…どういう事？」

何も理解出来なくて、何とかそれだけ聞いた。

樹「ジェシー俺の為にＪ２なってくれたんだよ。あいつ元々は成績も優秀で部活も好成績で、優等生だったから。でも、俺に付き合って荒れてくれてる。俺と居るせいであいつ何でも出来るのに色々言われてるのが悔しくて、何かもう俺が嫌になっちゃって。まぁ、嫌いとかじゃないから喧嘩はしないよ、大丈夫」

俺の心配していることが分かったのか、笑ってそれだけ言った樹くん。

その時、樹くんに謝った直後に二人が来てくれた時にジェシーくんが独り言のように呟いていた"ひとりぼっち"という言葉を思い出す。

…ジェシーくんのことを守りたいから一人にするの？

今ジェシーくんに一番寄り添えるのは樹くんなのに、無理やり離れて何になるの？

自分には何も関係ないのに、そんな事ばかり思っていた。