オドントグロッサム (ページ15)

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樹くんに謝りに行った次の日から、樹くんはすれ違う度に声をかけてくれるようになった。

学校中で噂されていることも知っている。

色んな人と喧嘩になっていることも知っている。

けど、あの時の樹くんの言葉は心からのものだと思う。

恐怖心が完全に消えている訳では無いけど、話しかけてもらえて嬉しかった。

樹「北斗くんお疲れ。バイバイ」

北「バイバイ」

樹くんは前に、Ｊ２と話すとき人目のつかないところに移動するのは俺に変な攻撃が行かないようにするためだと言っていた。

お互いに聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で挨拶を交わして何も無かったようにすれ違う。

それは、ずっと前からそうだった。

でも、唯一変わったことがある。

それが"ジェシーくんの名前を言わなくなった"こと。

今まで何をする時も必ずジェシーくんの名前を聞いていたのに、いつからか全く聞かなくなった。

でも、二人の事情もあると思うし変に気にすることではないと思って何も考えていなかった。

この時に俺は、二人の異変に気付いておくべきだった。

ある日の放課後いつものように雑用を終わらせて帰ろうとすると、前ジェシーくんの居た場所に樹くんが立っていた。

嫌な記憶が蘇ってくる。

北「…あ、樹くん。あの違う、これは…」

最近学校では喧嘩も起きていないし、Ｊ２の噂も聞かなくなっていたけど、やっぱり何かあったら…という思いはあった。

でも、樹くんは何も気にしていないような顔をしていた。

樹「今日ジェシー休みらしいんだけど、一緒に帰らない？」

それだけ言うと、何も言わずに靴箱の方に歩いていった樹くん。

慌てて自分もそれを追う。

北「あの、樹くん…」

樹「ん？」

北「あれ、俺がやりたくてやってるだけだから…」

樹「何が？別に何も見てないけど」

そう言ってとぼける樹くん。

俺が見た時の樹くんは明らかに驚いていた。

未だに樹くんの本性が分かっていない俺は、なぜか不安に襲われていた。

樹「あー、北斗くんが大切にしたいものは壊すつもりも傷付けるつもりもないから大丈夫」

俺の考えていることが分かったのか、樹くんは一瞬俺を見てそれだけ言った。