オドントグロッサム (ページ1)

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転校初日、俺は一人だった。

初日なんだから一人に決まってる。

ただ、普通の人なら自己紹介が終わった直後少なくとも次の休み時間には一人ぐらい話しかけてくる人が居るだろう。

でも、俺はそんなことも無く一日中一人だった。

唯一話しかけてきてくれた人から聞かされたのが
『Ｊ２には気を付けて』の一言のみ。

それ以外誰も話しかけてくることは無かった。

前の学校でもそうだったし、覚悟は出来ていた。

だから、今さら傷付くことは無い。

誰にも何も言わずに教室を出て、その日は真っ直ぐ家に帰った。

それから、何日も誰とも一言も話さない日が続いた。

名前を覚えられていない事に焦りはあるけど、だからと言って自分から話し掛ける勇気もない。

仕方が無いので、自分の席でひたすら本を読み続けた。

前の学校では、"委員会"や"係"などしなければいけないことがあったからここまで暇では無かった。

自分でも驚くほどのハイペースで本を読み進めていく。

そんな日常を一ヶ月ほど過ごした頃

この学校で初めて自己紹介以外で声を出した。

樹「…あれ、君って同い年？」

一瞬自分に話しかけられているということに気が付かなかった。

でも、周りを見るとその人と自分しか居ない。

少し遅れて返事を返す。

北「多分、同い年だと思います」

この学校の上靴が学年ごとで色が分けられている事は図書室に通っているうちに気が付いていた。

この人は、自分と同じ色。

同じクラスなのかどうかまでは分からないけど、同じ学年ということだけは分かった。

この人が、転校初日に言われた『Ｊ２』の一人だということには人と関わっていない自分が気付くはずがなかった。

樹「俺、田中樹。…君は？」

まさか自分に話を振られるとは思わず、驚いて顔を上げる。

ずっと俯いていたから気が付かなかったけど、この人の髪の毛は完全にピンク色に染まっていた。

学生でこの頭をしていることに若干の恐怖心を抱いたが、話し方からして悪い人ではないと判断し素直に答えた。

北「松村北斗です」

樹「あー、隣のクラスの転校生ね。マジで噂聞かなさ過ぎてもう辞めちゃったのかと思ってた」

それだけ言って、その人はすぐに去っていった。