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トンっ、とサービスラインに缶を置き、Aはラケットバッグから、鮮やかな赤いラケットを取り出した。
「私は缶を倒さないよ」
艶かしい笑みを崩さぬまま、彼女はそう言った。
そして、ボールを持って、反対コートのベースラインに立つと、スッと缶を指さして続けた。
「あの缶の上、ぴったりで球を落としてあげる」
先ほどまで無邪気な笑みを浮かべ、素直に青学メンバーを讃えていたAとはまるで別人のようだ。
息をするのさえ憚られるような、張り詰めた空気がこの場に流れている。
「な、なんか凄いね。Aさんがコートに立ってから、全然雰囲気が違う」
「ひえ〜っ、流石日本で注目されてる選手だにゃ〜」
「俺、Aさんのプレー見んの初めてっす」
河村、菊丸、海堂が口をこぼす。
中学生たちも、この空気と彼女の変わりようにどよめかずにはいられないようだ。
「静かに。ほら」
少し騒がしくなった彼らを、不二がたしなめる。
そう、まさしく今、Aがサーブを打とうとしていた。
３回ボールをついて、少し間をあけて更に２回つく。
彼女のサーブのルーティーンである。
スッとトスを上げ、無駄のない、流れるような動きで、サーブを打った。
彼女のラケットを離れたボールは、まっすぐターゲットに向かっていく。
……無茶な。
そんな球速で、勢いが落ちるわけがない。
誰もがそう思うだろう、フラット系の直線的な軌道のサーブである。
＿＿＿しかし、彼女の宣言通り、缶の真上に落ちたボールは、急速に回転し、まるでコマのように徐々に回転が穏やかになり＿＿＿＿
＿＿＿ぴたり、とそのまま停止したのだ。まるで命を失ってしまったかのように。
誰もが言葉を失った。こんなにも馬鹿げたサーブがあるなんて……。
だが、その沈黙を破ったのは、意外にもそのサーブを打った本人だった。
「どう？私、格好良かった？」
先ほどの、どこか艶やかな雰囲気からうって変わって、あっけらかんとした無邪気な笑みに戻っている。
それで我にかえったのか、中学生達が口々に話し始めた。
「すっげーッス！！部長の零式サーブみたいっす！！」
「いや、俺のサーブとは全く異なるものだった。どんな原理なのですか？」
「これはデータの取りがいがありそうだ」
思いの外、彼らの評価が良かったのが嬉しかったのだろう、Aは幸せそうに頬を緩めた。
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白雪 - すごく面白いです!更新待ってます! (2019年7月25日 4時) (
レス) id: 567a821487 (このIDを非表示/違反報告)
ストップモーション(プロフ) - めっさ面白いです！更新頑張って下さい！ (2018年3月30日 17時) (レス) id: 2a3b6c68d9 (このIDを非表示/違反報告)
黒九路苦 - つい主人公を応援しながら見てしまいました(笑)最高に面白かったです！更新待ってます！応援していますっ！ (2018年2月12日 16時) (レス) id: fe29a9c7c2 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 愛加那さん» コメントありがとうございます！私も早く彼を出したかったんです。その言葉をもらえて嬉しいです！今日、やっと登場させることができました。お待たせしてすみません。 (2018年2月10日 21時) (レス) id: c9527d5258 (このIDを非表示/違反報告)
愛加那(プロフ) - あれ？リョーマくんは……？ (2018年2月10日 5時) (レス) id: 7272416208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もみじ x他1人 | 作成日時：2018年1月23日 21時
