参拾 ページ31
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以前、彼女が入手した生徒管理に関する書類にはこんな事が記載されていた。
彼は椚ヶ丘学園の創立以来、最も優れた生徒だと讃えられており、自他共に認める椚ヶ丘No.1のトップエリートである。
これまでに受賞して来た学業以外に関する賞状や、彼が成し遂げてきた偉業などもそこには備考として載っていたが、そんな物に目もくれず華ノ衣はある一点の文に着目し、口に付けた玉露が入った湯呑みを置いて、両手で紙を握る。
『理事長の息子って噂は本当だったのね』
血縁者の欄に浅野學峯の文字があり、権力者を親に持つ自分の境遇と近しい物を感じて俄然彼に興味が沸いた。
座学や体術に加えて、芸術までも強いられて金字塔を打ち立てるような事を父親に求められる日々を送っていたのは自分だけでは無かった。
彼女は彼もまた横暴な親に頭が上がらないと勝手に思っていた。
ある日、華ノ衣は浅野に野暮用があって彼の後ろ姿を廊下で見掛けると声をかける為にその背中を追っていた。
しかし、どんどん遠ざかる彼に追い付けず、浅野くん、と彼の名前を呼ぼうと " あ " の字に口を開くが、ある部屋に入って行った生徒会長の姿を目視し声を掛けるのをぴたり、と辞めた。
彼女は理事長室と書かれたプレートが掛る扉に背を預けて、親子の会話を盗み聞く。
「理事長、頼まれていた提出書類です」
「君にしては随分と遅かったようだね。何か邪魔立てでもあったのかい？例えば担任の先生に嫌がらせをされたとか」
「ご存知でしたか」
部屋に暗雲が立ち込める気配を察知し、聞いているこちらの息が詰まった。
「ですが提出期限は守りました。僕自身、仕事を完遂したと自負していますが」
「いいや、いけないね。上に立つ者の道に障害は付き物だ。塞がれた退路をすぐに断つ事が出来なかった君は私の足元にも及ばない」
彼らの会話を聞いていると自然と自分と父親の影が重なって、まるで自分自身が責め立てられているような心地がして嫌な汗が噴き出してくる。
暴挙な父親に怯えてYESと従う事しか出来ない籠の中の鳥。
しかし、次に聞こえてきたのは予想外な反抗声明だった。
「精進しましょう。その後でたっぷりと頂点から貴方を見下ろしてやりますよ理事長」
彼の言葉にはっ、と彼女は自身の翼で羽ばたける事に気付かされる。
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ハバネロ(プロフ) - 鳥の子さん» もう最新話をチェックして下さって嬉しいです(＊´ ∨｀)第二章が公開されましたので、お時間が許す限り足を運んで貰えると幸いです。 (2019年8月29日 21時) (
レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - もう…好きです…何時も私の予想を裏切って来る様な展開を見せてくれて、本当に有り難うございます！まだまだ秘密が詰まっているのですか…？とても楽しみにしています！二章でも宜しくお願い致します！ (2019年8月29日 17時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
ハバネロ(プロフ) - 鳥の子さん» お褒めの言葉ありがとうございます(＊´ ∨｀)相手方に続きを催促して貰えるような書き方を心掛けていたのでそう言って頂けて光栄でございます！ 読者さんの応援のお陰で遂に第一章を終わらせる事が出来ました^^ 引き続き、次の章でも閲覧下さると嬉しいです。 (2019年8月29日 14時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 本当に、内容の切り方も絶妙で凄く好きです！きちんと次の話を読みたくなる様な設計になっていて、本当に素晴らしいと思います！此れからも更新頑張って下さい！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 木村君…まさかあのモブ男子と同じ扱いをされてしまうなんて…。此方に気があるのかと思わせてからの脅迫、想像(なんてしなくても凄く伝わって来るのですが)すると物凄く怖いですね…夢主ちゃん怖い…。一体何を言えと指示したのでしょう…カルマ君への脅し…？ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハバネロ | 作成日時：2019年7月12日 23時
