弍拾壱 ページ22
・
その日から彼女は彼の事を考えるようになった。
昆虫に媒介させて受粉を行う虫媒花のように、これまで華ノ衣は自身の美しさをひけらかし勝手にその美貌に誘われて近付いてくる男共を自身の目的を果たす手段として利用していた。
並大抵の人間には特に何もせずに済んだ。
ただ少しだけ優しく微笑し、思わず見蕩れるような仕草で相手を狼狽えさせて、心揺さぶる讚辞をホイッ、と投げ掛ける。
この三段階に渡る華ノ衣の誘引に鼻の下を伸ばしながら馬鹿な男は、彼女の意図に目もくれず視界に映る美女に手を伸ばし、罠に陥る。
捕えられたら最後。彼女に養分を吸い尽くされるまで道具として扱われ、その抜け殻すらも踏み台にして捨てられる。
周囲の人間を苔と同然に扱う様子だけは家の支配者によく似ていた。
『浅野くん、おはよう』
目を引くような儚げな瞳で彼女は彼に仁義を交わし、感性が反応してしまうような腕の取り方で彼を誘惑した。
彼はピタリ、と足を止めて静かになった。
『あらぁ？柄にも無く黙っちゃって。美人に腕を絡められて緊張しちゃったのかしら？』
「は？」
この顔がそう見えるならめでたい頭だな、と言った彼の表情は一つも色が変わっておらず、嘘吐きね、とさり気無く手首の脈を測ると平常値であり、彼女はたまげた。
『嘘。本当に何も思わないの？』
「いいや、一つ思う所があった」
『な、何よ。それなら最初っから言いなさいよ』
「鬱陶しい邪魔だ今すぐ離れろ」
彼はそう言って腕を振り払うもので、へ、とだらし無く開かれっぱなしの口はしばらく閉ざされ無かった。
(つ、次よ！次！)
しばらくこのような攻防が続いた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「暗殺教室」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハバネロ(プロフ) - 鳥の子さん» もう最新話をチェックして下さって嬉しいです(＊´ ∨｀)第二章が公開されましたので、お時間が許す限り足を運んで貰えると幸いです。 (2019年8月29日 21時) (
レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - もう…好きです…何時も私の予想を裏切って来る様な展開を見せてくれて、本当に有り難うございます！まだまだ秘密が詰まっているのですか…？とても楽しみにしています！二章でも宜しくお願い致します！ (2019年8月29日 17時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
ハバネロ(プロフ) - 鳥の子さん» お褒めの言葉ありがとうございます(＊´ ∨｀)相手方に続きを催促して貰えるような書き方を心掛けていたのでそう言って頂けて光栄でございます！ 読者さんの応援のお陰で遂に第一章を終わらせる事が出来ました^^ 引き続き、次の章でも閲覧下さると嬉しいです。 (2019年8月29日 14時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 本当に、内容の切り方も絶妙で凄く好きです！きちんと次の話を読みたくなる様な設計になっていて、本当に素晴らしいと思います！此れからも更新頑張って下さい！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 木村君…まさかあのモブ男子と同じ扱いをされてしまうなんて…。此方に気があるのかと思わせてからの脅迫、想像(なんてしなくても凄く伝わって来るのですが)すると物凄く怖いですね…夢主ちゃん怖い…。一体何を言えと指示したのでしょう…カルマ君への脅し…？ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 163dc6fb42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハバネロ | 作成日時：2019年7月12日 23時
