３５.Happiness ページ35
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机の上には淹れたての紅茶。
目の前にはどこか緊張した面持ちの少女。
アタシは足を組んでボロいソファに腰掛ける。
「随分と避けてくれたじゃないの」
ユウ「ヴッ、ｽｲﾏｾﾝ…」
別に怒ってないわよ。と彼女に告げれば、彼女は少し顔色が良くなったように見えた。
言葉の通り、あたしは怒ってない。
ただ、好きな子に想いを伝えたら避けられて話せずにいたら、心が痛むというものだ。
ここ数日、気が気でなかったのは十分に自分自身で感じている。
「ねぇ、アタシのことは嫌い？」
ユウ「え………っ、と」
困ったように頬をかく彼女を見て、あぁなるほどねと1人納得した。
そりゃ避けるわけよ。
両想いではないと確信していたが、まさか嫌われているとまで考えてはいなかった。
「…………分かったわ、ごめんなさいね。急に変な事聞いて。
聞かなかったことに…して頂戴…」
いても立っても居られなくなり、重苦しい空気の中、アタシはその場に背を向けた。
失恋というものは今まで経験してきた事がなかったが、まさかここまでに辛いものだとは感じていなかった。
今ここにいたら、きっと泣いてしまうだろう。
そんなの、美しくないｯ…。
ユウ「ｯｯヴィル先輩！！！」
「うっ！？」
ドスッと腰に衝撃が走り、前方によろけそうになるのをなんとか踏ん張る。
下を向くと、ユウが腰に手を回して後ろから抱きついていた。
「ユウ…離しなさい。
このままだと、アタシ勘違いするわよ」
お願いだから、今は離して。
涙は美しくないもの。貴方に見られたくないの。
これ以上、嫌われたくないの。
ユウ「勘違い、してください！！」
「……………は？」
ユウ「私は…、…私は先輩のことが好きです！
先輩よりも絶対先に私の方が好きです！
もう生まれた時からあなたのことが好きです！！」
ぎゅうううっと強い力で抱きついてくるユウの腕をそっと離して、思い切り向き合う形で抱きしめた。
「嘘ついてんじゃないわよ……」
ユウ「…最後のは嘘ですけど、それぐらい先輩のことが好きです…。
自分の恥ずかしいという気持ちだけで、先輩のこと避けて、…すいませんでした。」
思ったより、ユウは柔らかくて小さくて…。
それから、今までに感じたことの無い幸福感に包まれるようだった。
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作者名：いのさき。 | 作成日時：2020年10月4日 12時
