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「…ところで、なんで先輩は家に帰れないんですか?」
お邪魔しますとゾムさんの家のドアを潜り抜け、靴を脱ぎながらそんなことを聞いてみる。
「や〜それがさあ… 同じ会社の女の子と家でゲームしてたら同棲中の彼女が帰ってきちゃって地獄のなんのって!」
「うわあ…ゾムさんやっぱ追い出していいと思います」
「やろ?」
思った以上に全面的に先輩が悪かった。この人、昔痴情のもつれで会社内で女同士の冷戦が勃発して問題になったことを忘れたのかな。
「頼んますって〜!前泊まったことある同僚の家とかは彼女に全部割れとるから、幼馴染のゾムさんにしかお願いできないんやって!」
幼馴染。ゾムさんと先輩が?確かに先程付き合いの長そうな言動はしていたが。空気的に聞ける感じでもなかったので、あとでこっそり先輩に聞いてみよう。
「はあ…じゃあ俺は飯作るから。酒は先に飲んでてええで」
ネクタイを外しながら、ゾムさんはキッチンへと向かって行った。私は鬱先輩に手招きされて、リビングのソファに控えめに腰掛ける。
「Aちゃんは酒初心者やからな〜はい」
手渡された小洒落たデザインの缶には、桃のイラストがプリントされていた。
「先輩は何飲むんですか?」
「俺はビール♡Aちゃんも今度飲んでみ」
にこやかな顔のまま、缶の蓋をカシュと開け口元に運んでいった。軽快な喉の上下する音。その光景に、思わずこくんと喉を鳴らす。
私も飲もう。そう思い感のプルタブに指を引っ掛けたのだが、爪が少し長いため、なかなか上手く開けられなかった。
「ほい グラスは?」
「あ…大丈夫です」
「りょーかいです」
後ろからすっと片手が伸びてきて、缶をいとも簡単に開けてしまった。その手の主はいつの間にか黒いエプロンを身に着けており、彼の体がスラッとしているのもあり、随分様になっているなと思いながら缶に口を付けた。
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ヨリ(プロフ) - 心春さん» ありがとうございます💖 (2022年10月24日 0時) (レス) @page15 id: c190102040 (このIDを非表示/違反報告)
心春 - えっ好き(*˘︶˘*).。.:*♡ (2022年10月22日 15時) (レス) id: fea60e915c (このIDを非表示/違反報告)
ヨリ(プロフ) - 柚衣さん» わ~‼️ありがとうございます🥲🤍 (2022年3月13日 17時) (レス) id: c190102040 (このIDを非表示/違反報告)
柚衣 - んふふ、めっちゃこの関係好きですwなんかたどたどしい感じで、可愛いですね (2022年3月13日 15時) (レス) @page7 id: a954c39e8d (このIDを非表示/違反報告)
ヨリ(プロフ) - ロクロさん» コメントありがとうございます! (2022年3月12日 13時) (レス) id: c190102040 (このIDを非表示/違反報告)
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