〈 d! 〉おとなりさんに胃袋掴まれた〈zm〉

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昔から、食に対しての関心があまり無かった。
空腹になれば、何でもいいから腹の中に入れての作業の繰り返しだと、幼い頃から認識していた。それは20を過ぎた今でも同じことで。

決して、金銭に余裕がないだとかそんなことではなく。事実私は、設備がしっかりしているマンションに一人暮らしだ。仕事も順調だし一概に生活が充実していると言えるだろう。


__え？彼氏？…先々週までは居たとも。身長も顔も申し分ない彼氏が。


「Aの料理が食べてみたい」

普通の人にとっては、なんてことない要求だろう。しかし私は包丁を握ったことも、料理を目的としてキッチンに立ったことも無かった。しかし上手くあしらっても、どんどんボロは出ていく。結局みんな家庭的な女が好きなのだと今までの“元彼氏”を見てきて酷く痛感した。


ああ、あの男のことを考えているうちに空腹になってしまった。
台所へと行き、戸棚の扉に手をやる。基本私は決まったものしか食べない。同じ種類のカップ麺がいくつか積み重なっているだけだ。足りない栄養分などは、サプリや飲み物で補っている。


今までこの生活で体調を崩したりなんてことも無い。しかし別にカップ麺が好きなわけでも、こだわりがある訳でもなく。単純に、食が面倒なのだ。毎日違う献立を作る人は本当に凄いと常日頃心から思っている。


電気ケトルに水を入れボタンを押そうとしたのだが、チャイムの音により阻まれる。何か頼んでいたか、自分の記憶を辿りながら、モニターへと向かった。

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