10話 ページ10
「あの、その颯馬さんという方はどういう人なんですか？」
「気になるかね？」
「まあ、はい。」
だって、もしAの初恋の相手だったりしたら。
「Aの初恋の相手かもしれないな。」
うわ、まじか。
「気にしなくていい。昔の話だ。それに、Aはあれが初恋だったことに自分で気が付いていない。20歳ぐらいの時に恋の仕方がわからないって妻に相談していたぐらいだ。」
よかった。不幸中の幸いだ。
「まあ、でも。一回颯馬くんには会ってみるといい。Aを一人で合わせるより、一緒に会いに行ったほうが安心だろ？」
「そうですね。」
あ、そうだ。
「明日ってお暇ですか？」
「19時ごろから後の時間なら、私も妻も空いてる。」
「じゃあ、リンクにいらっしゃいませんか？いつも使っているリンクにアップライトピアノが設置されたので、Aと一緒に行こうって話をしていたんです。」
「邪魔にならないなら、伺わせてもらうよ。あ、じゃあその時に颯馬くんも誘って連れて行こうか？」
さすがお父さん。意図をくみ取ってくれた。
「お願いします。」
俺の目的は、颯馬さんに牽制をしておくこと。
俺たちが仲良しで息ぴったりなところを見せれば、仮に颯馬さんがAに気が合ったとしても、諦めてくれるかもしれない。
『何の相談？楽しそうだね。混ぜて。』
お、Aが戻ってきた。
「明日の練習に私と母さんと颯馬くんを招待してくれたんだよ。」
『え、そうなの？結弦くん、邪魔にならない？大丈夫？』
「うん。もちろん。大丈夫。」
「あら、いいわね。楽しみ。」
お母さんも乗り気だ。よかった。
「寒いので、温かい羽織れるものを持ってきてくださいね。」
「わかったわ。A、颯馬くんに電話して誘って来たら？」
あ、それは。
『そうだね。ちょっと電話かけてくる。』
「結弦くんが説明したほうがいいんじゃないか？入り方とかいろいろあるだろうし。」
お父さん、ナイス。
「そうですね。A、つないでもらっていい？」
『あ、うん。じゃあ、私の部屋でスピーカーにして電話しようか。』
「うん。そうしよう。」
ーあなたsideー
颯馬と話すの久しぶりだな。
楽しみ。
『じゃあ、かけるね。』
prrrprrrr
〈もしもし。〉
『颯馬、久しぶり。』
〈え、A？めっちゃ久しぶり。元気だった？〉
『うん。元気元気。颯馬は？』
元気そうな声。変わってないな。
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作者名：かれん | 作成日時：2022年4月6日 7時
