43話 ページ43
「あんまり驚かないんですね。」
『まあ、医者家系とかあるからね。私の家は違うけど。』
「たしかにそうですけど、医師会の人ってすごいじゃないですか。」
まあそうかもしれないけど。
『川上先生は川上先生でしょ。』
「そういうところが羽生さん好きなんでしょうね。」
え？
『それはどういうこと？』
「先入観抜きで人をまっすぐに見られるところですよ。」
先入観か。
『それは職業病みたいなものだよ。多分。先入観を持って診察したら、失敗する。』
「まあそうかもしれないですけど。」
ー川上sideー
立ち聞きするつもりはなかったんだけど、俺の話を如月先生と吉川さんがしてるのを聞いて、通りがかりづらくなったな。
どうしよう。
でも、川上先生は川上先生でしょ。って如月先生が言ってくれて、なんか救われた気持ちになった。
医者になりたいと思ったのは、10歳の時。
父がテレビに出たのを見て、かっこいい。こういう医者になりたいと思った。
それから医学部に進学しやすい中高一貫校に通い、如月先生と同じ大学の医学部に入学した。
自分では努力したつもりだったけど、周りの先生や同級生、その保護者は川上先生の息子だから優秀なのは当たり前。お父さんすごいね。って言って俺のことを見てくれる人なんて一人もいなかった。
研修医になってからもそうだ。
どれだけ頑張っても、周りの同僚が見ているのは親。優秀なのは親のおかげ。
あわよくば紹介してほしいと媚びる医者なんて数えきれないほどいた。
でも、如月先生は、まっすぐに俺を見てくれた。
親とか関係なく。
勉強熱心だとか、オペが上手だとか、。全部俺だけを見てほめてくれた。
「川上、お疲れ。、どうかした？」
「真田先生、お疲れ様です。」
「立ち聞きか？言っとくけど、あいつのこと週刊誌とかに話すのは絶対だめだからな。」
「すみません。そんなつもりは。、、」
「冗談だよ。、知ってる。如月、いいやつだよな。、俺も二世だからさ、親の七光りとかいろいろ言われてたんだ。、、でも、如月はそういうの抜きに向き合ってくれる。」
そうだったんだ。
「はい。如月先生は、尊敬できる立派な医者です。」
「、頑張れよ。如月が研修医の面倒を見るのは初めてだ。お前期待されてるよ。」
「はい。頑張ります。」
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作者名：かれん | 作成日時：2022年4月6日 7時
