ホットココアをあなたに (ページ10)

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10話ページ10

本当にいいのかな。
あの羽生さんとご飯食べられたってだけでいくらでも支払えるくらい価値のあることなのに。

「よし、着きました。行きましょう。防寒具ないと寒いので、防寒具を受付にかりましょう。滑りたいならスケート靴も。」

『防寒具だけお借りします。』

「わかりました。アップしてるのでゆっくり準備してから来てください。」

『はい。』

ー－－－－－－－－－－－
さっきまで準備運動をしてたけど今はリンクで滑ってる。

あんまり気合入れずに滑ってるのかもしれないけど、すっごく早い。

体の使い方がうまいな。
怪我をしにくいように工夫自体はしてるんだろうな。

あ、ジャンプし始めた。

すごいけど、これはかなり負担がかかりそう。

音、かなり大きいな。

ー羽生sideー

よし、調子いいし、そろそろやってみるか。まずは、バラ1から。

「Aさん、そろそろやります。」

『あ、はい。』

「真ん中にいって合図出したら、このボタン押してもらっていいですか？」

『わかりました。』

ーあなたsideー

合図きた。
よし。

音楽が流れ始めた。
私のバラード第一番だ。

すごい。
曲の世界に入ったような気持ちになる。

動きを見ながら、何か今後の治療法とか提案できたらいいなと思っていたけど、そんなこと考えられない。

ただただ羽生さんの表現に魅了されてしまう。

ーー

ー羽生sideー

すごい気持ちよかった。
Aさんも喜んでくれてたらいいんだけど、

「あの、どうでしたか？」

ん？
泣いてる？

「大丈夫ですか？」

『大丈夫です。私が思うバラード第一番と解釈が同じで、曲の世界観をこんなに感じられるんだと思って感動しました。フィギュアスケートってすごいですね。美しすぎて。』

そんなに感動してもらえるとは思ってなかったから、うれしいな。

『私、こんなすごいものをただで見ていいんでしょうか？きっと羽生さんのアイスショーなんてすごく人気でチケット争奪戦なんですよね。なんか今日は私が素敵な思い出をもらってばかりで申し訳なくなります。』

もらってばかりって。そんなことはないのに。

「俺も今日すごく楽しいです。きっと忙しいと思うんですが、これからもこうやって練習を見学しに来たり、ご飯食べに行ったりできたらうれしいと思うんですが、どうですか？」