ホットココアをあなたに (ページ7)

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7話ページ7

『あの、もっと楽に呼んでいただいて大丈夫ですよ。私、先生って呼ばれるの苦手で。』

「じゃあ、Aさんって呼んでもいいですか？」

下の名前？まあいっか。外国みたいなノリで。

『はい。』

「なんで先生って呼ばれるの苦手なんですか？」

『私、そんな先生って言われるほど偉い人間じゃないんです。それに、羽生さんに先生って呼んでいただくなんて畏れ多くて。』

「なんか勘違いしてませんか？俺、普通の人間ですよ。」

いやいやいや。

『普通の人間はオリンピックなんて出られませんし、そんなに真摯に努力し続けることもできません。それに、あんなに一つのことを愛しぬく覚悟なんて並大抵のことではないと思います。』

「愛しぬく覚悟ね。、、Aさん変わってますね？」

変わってる？

『そうですか？』

「はじめて言われました。」

そうなんだ。

『少なくとも私はそう思います。ただ好きになることに覚悟はいらないけれど、何十年も愛し続けないといけないんです。覚悟がなければできません。どんな好きなことでも嫌になる瞬間はあると思うので。』

「Aさんも経験があるんですか？」

『同列に語ってしまってよいものなのかわかりませんが、私にとって外科医の仕事がそんな感じです。』

(コンコン)

「失礼いたします。前菜をお持ちしました。」

すごい。おいしそうすぎる！
見た目もすっごく可愛いし。

「食べましょうか。」

『はい。』

「『いただきます。』」

ー羽生sideー

なんかAさんと話しているとすごく落ち着くような気がする。

人柄というか。話し方というか。

考えていることもすごく共感できるようなことばかりで。

『美味しい。これ、すっごくおいしいですね。』

表情がコロコロ変わるようなかわいらしさもあって。

『羽生さん？』

「Aさん、食べることが好きなんですか？」

『はい。唯一の楽しみなんです。』

唯一か。
他に趣味ないのかな？

「おうちにいるときは他に何をしているんですか？」

『うーん、、、寝てるか、症例集めてるかの二択ですね。、、あ、たまに運動もしてますね。』

「運動ですか？意外です。」

『筋トレとかそういう類のものではなくて、ジョギングとか体力をつけるタイプのものですね。オペは体力も必要なので。あ、でも私すごく運動神経悪いんですよ。』