ホットココアをあなたに (ページ34)

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34話ページ34

ー羽生sideー

鍵開けとくから自由に入っていいよって言われたから、18時少し過ぎにAちゃんの家に入った。

物音ひとつしないから防音室でピアノ弾いてるのかと思って見に行ったけど、あかりはついてなくて、、

しばらく探していたら、リビングのソファーで丸まって肩を震わせているAちゃんを見つけた。

声をかけて振り返ったAちゃんの目はびっくりするぐらい腫れていて明らかに何かあったとは思った。
でも、何があったのか話そうとしない。
交際を公表したことで何かあったということではないはずだから、おそらく仕事？

どこまで踏み込んでいいものなのか、、。

正直スケートで困ってるときにむやみやたらに口出しされるのは嫌かも。

ーあなたsideー

どうしよう。完全に結弦くんを困らせてる。

『結弦くん、お茶淹れたよ。』

「あのさ、俺帰った方がいい？」

え？

『なんで？』

「なんか、1人になりたいところに来ちゃったかなと思って。」

、、、話してみようかな。
別に隠さなきゃいけないことではないし。

『大丈夫。来てくれて嬉しいよ。、、重い話になるかもしれないんだけど、聞いてくれる？』

「もちろん。」

『昨日の夜、救急に患者さんが運ばれてきたの。高いところから転落して意識不明の重体で。、、、その患者さんは心臓の持病があったから、私も呼ばれたの。』

「うん。」

『私が行ったときには、もう心室細動がかろうじて続いてる状態で、、。その患者さんの持病が大動脈解離って言うんだけど。、1番大きくて大事な血管に不備があったっていう意味ね。高いところから落ちた衝撃で血管が破裂してたの。、、だから、つなぎ合わせる処置が必要で。人工心肺を使って一回心臓を止めて、血管を縫合した。、、、。もちろん人工心肺は切り離すときにその患者さんの心臓が動く保証はなくて、かなり厳しい状況だったの。、でも縫合しないとその患者さんは生きられない。だから、』

「うん。ゆっくりでいいよ。」

結弦くんは本当に優しいな。、

『結局縫合はできたけど、心拍再開はしなくてそのまま亡くなった。』

「でも、それって誰にもどうしようもないことだったんじゃないの？」

『私の縫合が早かったらとか、もっと知識があったらとか反省すぎる点はたくさんあるよ。患者さんの家族にも怒られちゃった。本当にダメだな、私と思って落ち込んでた。話聞いてくれてありがとうね。』