21.2 ページ35
「俺さ、会いたいと思ってたの、和也くん」
「…ほぉう…」
ぐいっと顔を近づけられて後ずさる。
見た目とは裏腹に積極的な彼は、恐らく相手の懐に入り込むことに慣れている気がする。
兄貴が、じゃあ後は2人で楽しんでーとヒラヒラ手を振って出て行った。
「あ、大丈夫だよ。
和也くんのこと狙ってるとかじゃないから。
俺は翔くんとは違うからね」
「えっ…と。
まあ、そうだとは思うんですけど、あの、名前…」
「あぁ！忘れてた、俺、大野智」
よろしく、と手を差し出される。
咄嗟にこちらも手を差し出して握手を交わす。
で、、何で俺がこの人と2人なんだ。
話すこともなく気まずい空気が流れて、数秒の沈黙の後、
座ったら？と目の前の席を促された。
そういや、立ってたままだった。
「大野、さん…。
あの、俺と会いたかったって、一体どういう…？」
この対面の意味が未だに分からず、遂には俺の方から聞き出してしまう。
彼は思い出したように少し笑ってから、
よく聞くんだよ、和也くんの話。と頷く大野さん。
「よく聞くって、兄貴からですか？」
「そう。兄弟なのに活動域が正反対の人間って言ってた。外が好きな翔くんに、中が好きな和也くん。
どんな人なのかなーって気になっててさ。でも、想像通りのコで良かったぁ」
ふにゃあと、この人独特の雰囲気で微笑まれて、何となく安心感を持つ。
まぁ、結局この人が何故俺に会いたかったのか、イマイチ掴めない所はあるが、わざわざ全休の日に外出させられた見返りはあったといえよう。
昼ごはんも奢ってもらったし。
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作者名：syuka x他1人 | 作成日時：2017年7月28日 23時
