この世にはいない。(S×J) (ページ38)

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-闇-１０ページ38

「オレは…ずっとお前を騙してたんだぞ？」

「でも、助けてもくれた」

「冗談じゃない……それも全部嘘だって言っただろ！」

翔は声を荒げ、潤を突き飛ばす。

ドンと言う音と共に潤が倒れこんだ。

しかし、もう一度顔を上げ、翔を見る。

「それでも！
…もし翔くんに助けられなかったら、オレきっと死んでた。

自分が単純だって事は分かってるけど…翔くんは、閉ざしかけたオレの世界の、光だから」

この世の中は、人間界は、良いところだ。

そう思っていた、じゃなくて、そう思いたかったんだ。

魔法界では自分の考えが受け入れられず1人だった。

人間界でも、同じ思いをしかけた。

でも何処かに、光はあると思いたかった。

「それに、全部じゃないでしょ、翔くんの嘘…」

翔がハッとして潤を見る。

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「櫻井翔。その名前は、本当でしょ…？」

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.

初めて自分の仇の孫、「松本潤」を見たとき、2つの感情が翔の中を渦巻いていた。

1つは恨み、もう1つは…戸惑い。

きっと自分の親たちが犯した事件を何も知らずに育っただろう無垢な笑顔、復讐するには相応しくない美しく整った顔

彼に復讐する事で、本当に父の仇は取れるのだろうか、と。

ただ復讐した自分を後悔するだけじゃないか、と。

迷いの中復讐を始めた、そのうち答えが見つかるだろう、と。

見つけた答えが、やはり後悔だったと分かったときこれからどうすれば良いかわからなくて、翔は潤を帰さず自分も戻らないという選択肢を選んだ。

それが、せめてもの潤への償いだった。