-闇-８ ページ36
その時だった
「ガチャ」と音がする。
早くも、翔が帰って来た。
潤は不思議と安堵する。
「誰か、いるのか？」
スタスタと足音を早め、寝室のドアを開けた。
智はスッと姿を消し、寝室には鎖を外された潤だけが残った。
「おい、お前…どうやってこれを！？」
翔は周りを見渡す。
静寂が空気を包む。
.
.
「翔くん…どうして、、どうして…」
「…お前……」
「…なんで、魔法界に行かないんだよ！！」
潤は今出せる精一杯の声で翔に訴えた。
翔は驚いて目を丸くさせ、息を飲んだ。
そして一度深呼吸をして潤を見下ろす。
低い、低い声で
「聞いたんだな、オレの事…」
もう一度翔は辺りを見回す。
そして杖で時間を止めた。
時間に溶け込むように姿を消していた智は、うっすら見えるようになり、魔法が解除された。
.
「誰だ…」
「魔法界のものだよ。…潤を助けに来た」
「無理だ。
杖をオレが所有している限りコイツは帰れない」
智と翔はお互いに睨み合う。
長い長い沈黙が流れた。
.
.
「早く、魔法界に行きなよ…」
潤が小さな声を上げた。
「潤！なんでそんな事！
早く杖を取り返して魔法界に帰ろう」
「オレは…もういいよ。
どうせ、あんな場所に未練なんてないんだ。
父さんも、おじいちゃんも。
自分のプライドだけが全てで民を顧みる事をしない。翔くんも、そのせいで人間界に落とされた…非情だよ」
「お、おまえ…」
「翔くん、早く行ってボロボロにしてきなよ、あんな世界。…それが目的だったんでしょ」
黙ったまま翔は杖を握りしめ、グッと力を込めてから、その杖を真っ二つにへし折った。
「「あっ！」」
潤と智は同時に叫ぶ。
翔は構わず杖を投げ捨て、潤をキッと睨みつけてからその胸ぐらを掴んだ。
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作者名：syuka x他1人 | 作成日時：2017年6月20日 20時
