この世にはいない。(S×J) (ページ14)

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-光-１４ページ14

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潤は少しためらったが、櫻井の意志の強さから、信じてもいいんじゃないかと思い直し、櫻井の言う事に従った。

帽子を深く被り直して店内へと恐る恐る入る。

「いらっしゃいませ」

その言葉に咄嗟に潤は顔を上げた、がバーテンダーは潤の顔を一目見ただけで驚く様子もなくこちらへどうぞ、とカウンターへ案内したのだ。

まさか、と潤は思った。
櫻井は一体何を細工したと言うのだろうか。

潤は不思議に思ったが、今はそんな事言ってる暇はないと、カウンターに座って櫻井に頼まれた事を実行に移した。

「すいません、マジックを見せてほしいんですが…」

「かしこまりました。私でよろしいですか？
こちらにバーテンダーの写真と得意なマジックが書かれたプレートがあります、好きなバーテンダーを選んで下さい」

「…じゃぁ、ニノミヤさんで…」

程なくして奥からニノミヤさんらしき人が出てくる。

潤の顔を捉えるとスッとトランプに向き直り、ではまず出会えた感謝に…とトランプを切って潤に見せてきた。

やはり彼が潤の顔を見ても何も言ってこないのが、潤は気になったがその理由も分からなかった。

「この中から1枚好きなカードを選んで下さい」

櫻井に頼まれた事とは、
ニノミヤの魅せるマジックを魔法で失敗させること
だった。

「じゃあ…このカードで」

「選んだカードをよく見て覚えてください」

潤の選んだカードはスペードの6、きっとニノミヤはそれを当てるマジックをするのだろうと潤は思った。

その予想の通り、これから当てたいと思いますというセリフを言って来たので、潤は魔法を使い選んだカードを分からなくさせた。

ニノミヤは少し苦悶な表情を見せたが、あなたの選んだカードはコレですね、と言いながらカードを開いた。

書かれていたのはハートのジャックだった、

違う、と潤は思った。