この世にはいない。(S×J) (ページ12)

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-光-１２ページ12

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「翔くんほんとにありがとう！
オレ翔くんに出会えてほんとに良かったよ。救世主だよ」

櫻井は素っ気なくあぁ、と返したが、心の内では少し嬉しかった。

ただ、そんな事中々言われないから気恥ずかしくなったのだ。

魔法使いは感情を露わにするのが通常なのだろうか…人間ならこんな事子供じゃないと言わないだろう、と櫻井は思った。

「じゃあ今日行くか、昨日言ってた店に」

「あれ、大学はないの？」

「オレ4年生だからさ、卒研書くのとゼミ以外無いのよ。
今日は何もないし、早速いかねえとまたどっか違う場所に渡ってしまうかもしれないだろう？」

「そっか、そうだね。じゃあ早速行きましょ！」

潤は変装するように櫻井に言われたが、大丈夫大丈夫と靴を履こうとすると今度は本気で怒られる。

「お前なぁ、仮にも指名手配犯なんだぞ？
ここは魔法界とは違う。見つかったら捕まってしまう事くらい、わかるだろ」

「……ご、ごめんなさい」

今度はシュンとなって変装を考えた。
魔法を使えば自分を変える事くらいは出来るが、潤はどうしてもそれだけはしたくなかった。

「なんでだよ、その方が安全だろ」

「分かってます…でもオレはオレのままでいたいんです…
向こうでは、いつもオレはひどい事ばっかり言われてて、自分が嫌になるくらいだったんです。でも人間界に来て、初めて自分でいる事の存在意義が分かったような気がして…。
すいません。
そんな事ただのエゴだって分かってるけど…」

「……とりあえず、帽子かぶってメガネかけとけ」

どうしてだか、櫻井には今の松本の言葉が胸にひっかかった。

櫻井は昔から、人の言葉に心が揺らぐ事などなかったのだ、が、潤のまっすぐな想いは正直に受け止める事が出来た。

それが何故だかは分からなかった。

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櫻井もまた、潤と同様に過去にいい思い出がないのだ。