Act My Age_5 ページ28
「A、最近飛んでないでしょ？」
クンに指輪のことを聞こうとして、私といる時には右手にちゃんとある指輪を見て口をつぐむ日々を繰り返すこと数日。
私の家に遊びに来ていたクンが聞いた。
「最近というか、何年も飛んでないね。」
訓練学校は結局中退してしまったし、そのあとはずっと地上職だったから全然というのは伊達ではない。旅行はずっと車か電車だったし、飛行機自体にも乗っていないまである。
「僕、最近ヘリコプターの免許取ったんだけどひとっ飛び行かない？」
実はもう飛行場も機体も押さえてあるけどね。
そういって綺麗な笑顔を浮かべた。いや待て待て。いつの間に？え？そんなに簡単に取れるものじゃない気がするけど？というか今から？
混乱する私をよそにクンは「はい、出発〜」と言って私をあれよあれよという間に車に押し込まれ、飛行場に到着した。
「え？ちょっテン？？？」
ヘリコプターの横に眩しそうに眼を細めながら私たちを出迎えたのはテンだった。
「やっほ〜Aちゃん。」
何から聞こうとあわあわしている私そっちのけで二人が何度か言葉を交わし、クンが操縦席に座る。
テンがドアを開けてまだ混乱している私をヘリコプターの中に入るよう促す。
「素敵な二人だけの空のデートをお楽しみください〜。」
間延びした声で私に声をかけて扉を閉めたあと、今度はクンの方へ向かう。
「今日は航空無線切っといてあげる！！！」
プロペラの音に負けじと大きな声を張り上げたのでテンの声が私にも聞こえてきた。
自分から盗聴バラしていくスタイルなんだ…
「はあ！！？？」
クンの大きな声と同時にドアがバンっと閉められ、「まあ、空で聞けばいっか。」とクンが呟いて機体を浮き上がらせた。
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作者名：やまだ | 作成日時：2021年7月29日 17時
