記憶 ページ9
Ren Meguro
沈みかけの日差しが、街を赤く染めていく。
隣にいたはずの君はもういなくて、俺ひとり。最後に君から聞いた言葉はなんだっけ。
……そういえば、君はハッキリとこの関係にピリオドを打たなかった。
つまり、まだ、期待していてもいいんだよね？
いつになったっていい、俺は君のことを待ち続ける。
だから、早く会いたい。会って、君との思い出を上書きしてよ。
でも、そんな日は来るはずもなくて。
『あっ……』
「ごめんね、お待たせ！」
俺の目の前を通り過ぎて、俺の知らない人と並んで歩く、幸せそうな君を見て、はっきりとわかった。
……俺たちって、もう終わってたんだなって。
ごめんね、俺は君を守れなかった。
俺が強がっていたから？考えが幼な過ぎたから？いやどっちもだな。
でも1番の理由は、君とちゃんと向き合えなかったから、こんな結末になった。
どれだけ季節が流れても、俺は囚われている。
『ねえ、会いたい』
この言葉が無駄でしかないこともわかってる。
夜になっても、俺の部屋に月明かりは届かない。
暗い、怖い、そう呟いた君のことを抱きしめていた、その腕も、今は宙を彷徨うだけ。
もう少し、素直に向き合うことができていたら、今も君は俺の隣にいてくれたの？
そんな俺の気持ちを君は知ったら、きっと「自分勝手だよ」って呆れてしまうんだろうな。
でも、それくらい俺の中ではずっと残っている、後悔している。
『……あいたいよ』
時が過ぎるたびに、君との思い出が雪のように溶けていく。どれだけ頑張ってももしかしたらもう君の何かを忘れているんじゃないかなって思ってしまうくらい。
だから、君との思い出が完全に溶けてなくなってしまう前に。
もう一度、もう一度だけ、あの時に戻ることができるなら、君のことを追いかけて、引き止めていたい。
『愛してる』
そう、君にちゃんと伝えたい。絶対に、今度こそ、離さないから。
参考楽曲
中島美嘉「ひとり」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氺 | 作成日時：2021年11月21日 22時
