線香花火 ページ3
Hikaru Iwamoto
今日が最後のチャンス。君を夏祭りに誘った。
君は浴衣を着ていて、とても綺麗だった。なんか、俺も浴衣着ればよかったかなーと少しだけ後悔。
「照くんさそってくれてありがとう！めっちゃ楽しみにしていたんだ！」
『そう？ならよかった』
知ってるよ、だってこの夏が終わったら君は引っ越す。もう会えなくなってしまうからね。
いろんな屋台を回って、君の好きなものを買って、一緒に食べていた。
「んふふ、おいしい」
綿菓子を頬張って可愛く微笑む君と手を繋ぐことができたらどれだけよかったか。
「あっ！」
遠くの方に、友達が何名かいる。
「照くん、行ってくるね！」
『え、あ、ちょ……』
本当は行かないでほしかった。けど、君の思い出の邪魔をしたくなかった。
中途半端に伸ばしてしまった手を戻して、友達とはしゃいでいる君を見ることしか出来なかった。
「ごめんね照くん！！大丈夫だった？」
『大丈夫だよ、めっちゃいい店見つけたから一緒に行こう』
「え！！本当に！？やったー！！」
テンションの上がる君を見て、なんだかこっちも嬉しくなってきた。
『ほら、金魚すくい！』
「わぁ〜やってみたかったんだよね〜！！」
はしゃぎながら2人で金魚すくいをやってみる。
『あ〜結局どっちも取れなかったね』
「意外と難しかったかもww」
『あ、そうだ、そろそろ花火始まるから、とっておきの場所に行こう』
今日だけ、君だから教えてあげる、俺のとっておきの場所。
「すごい、さっきまでのが嘘みたいに静か」
『ここなら、人混みとか気にしないで花火を見れるよ……結構時間あるね、これやろっか』
君が友達と遊んでいた時に買った線香花火。それを見た途端、君の目が輝いた。
線香花火をつけて、2人で静かに楽しむ。今なら2人きり、言えるかな。
君のことが、好き。
「……あっ」
2人同時に線香花火が落ちて、その瞬間、花火が上がった。
『すごっ……』
「ほんと、綺麗」
俺の気持ちも、花火のように綺麗に消えてしまえばいいのに。そしたら、こんなに苦しむこともないのかな。
結局なにも言えないまま、夏は終わり、君は引っ越していった。
君が今、どこで何をしていのか、俺はわからない……
参考楽曲
White Berry「夏祭り」
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作者名：氺 | 作成日時：2021年11月21日 22時
