秋空 ページ2
Raul
落ち葉が風に吹かれて舞い上がる。家からいつもの遊び場まで行く時にある坂道。
子供の頃は、結構急と感じていて、1人で下るのは、少し怖かった。
「ラウール！一緒に行こう！」
『あ……ありがと……』
君は手を繋いでくれて、それで俺も一緒に坂道を下って行った。
あの時の君の手は暖かかった。
何度この季節がやってきただろうか、もう学校から帰る時、空は夕暮れになっている。
子供の頃は、2人で歩いていた。だけど、君の隣にいるのは俺じゃない。
君は前の方を歩いていて、その隣には、知らない人がいる。
よく言うよね、幼馴染との恋は成就しないって。そんなの嘘だと思って信じていなかった。でも、どうやら俺たちも例外ではないらしい。
絶対に俺には見せない可愛い笑顔を、あいつに見せている。だんだんと、俺の知らない君が増えて行って、遠くなっていきそうで……
『うわっ、寒っ』
ここ最近の冷え込みはすごくて、冷え切った手を温めながら、君のことは見えないふりをして追い越した。
「あっ、ラウール」
お願い、こっち見ないで、俺のことなんて見んなよ。その顔……あいつに向けておけよ、なんて本当は言いたくないけど、君はあいつのものだから、もう俺には……
俺って煩わしいからさ、忙しい時でも、頭の中は君でいっぱい。だからそうやって心配なんてしないでほしい、期待しちゃうんだから。
そんなある日、俺はあいつを見かけた。あいつはものすごく幸せそうな顔をしていた。
なんだか、その顔を見た時に、ああ、あいつも、俺みたいに君のことを愛しているんだねって気づいてしまった。
なんか……両思いほど、強いものってないよね。もう俺には、付け入る隙なんてない。
俺の初恋よ、さよなら。
もう普通になろう。君とは、友達として今後もそばにいさせて。
少しだけ、ううん、本当はだいぶ寂しいけどさ。
参考楽曲
EVO+「彼女」
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作者名：氺 | 作成日時：2021年11月21日 22時
