傘 ページ1
Ryohei Abe
「本日の天気は、1日雨が降るでしょう、気温は……
テレビの天気予報を眺めながら、ゆっくりと準備を進めていく。
そういえば、君と出会ったのも、こんな日だったっけ。
天気予報を無視して出かけちゃったせいで、途中で雨が降ってきて、雨宿りをしていた。
『止まない……どうしよ……』
「あの、大丈夫ですか？」
『あっ……』
その時はまだ同じ大学の同級生ってことしか知らなかった。
傘を差し出して微笑んでくれた君は、とても柔らかく微笑んでいたっけ。
そこから色々あって一緒に過ごすことが増えてきた。
笑ってる君、勉強を頑張っている君、全部がとても綺麗だった。
雨が降る中、同じ部屋で一緒に過ごすことも増えたから、君の持ち物が増えてきた。
俺たちは、順調に進んでいった。君となら、ずっと一緒にいることもできる、そう思っていた。
そして君は……
俺の前からいなくなった。
何がいけなかったのかな。君が部屋を出た後、窓を叩きつける雨粒が聞こえてきた。
今日の予報では晴れるって言っていたのに。玄関を見ると、君の傘が置いてあったままだった。
急いで飛び出すと、雨が体に当たって、段々と濡れてくる。
『置いていかないで』
ボソッとつぶやいた声は、雨音に消えて、届くはずもなかった。
それから、君は帰ってこなかった。でも、俺は待ち続けるよ。
ねえ、俺、天気の勉強始めたんだよ。いつか、雨が止んで晴れる日が来るのを知るためにさ。結構難しいけど、でも頑張っているよ。
君が教えてくれたよね、止まない雨はないって、どんなに雨が降っても、必ず晴れるから、だから、晴れるまで……君が帰ってくるまで、俺は。
参考楽曲
ンダホ from Fischer’s「雨」
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作者名：氺 | 作成日時：2021年11月21日 22時
