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非現実的なイケメンを前に、魅了されるよりは気後れしているらしい彼女が、肩を縮こませながら降谷君の傘に入れてもらっている横で、諸伏君は、困ったような微笑を(たた)えてこちらの様子を(うかが)っている。

私は観念した。

「じゃあ、お邪魔します」
「うん、どうぞ」

おずおずと笑顔を作って近寄ると、諸伏君は優しく笑って、私が入りやすいように傘を大きくこちらに傾けてくれた。

ざあっとアスファルトを打つ雨の響きに、傘が雨粒を弾く音が重なり、四人で二つの傘を並べて帰っていても、激しい雨音に閉ざされた空間に二人きりでいるような錯覚に陥る。

傘から落ちる雨垂れが諸伏君の肩を濡らすので、私はなるべく身体を内側へ寄せなければならず、ひそかに触れ合った腕から伝わる体温に緊張した。

「天気予報だと、雨だって言ってなかったんだけどね」
「うん。オレも、朝(ゼロ)に言われなかったら忘れてたよ」
「降谷君は、なんでわかったの?」
「ツバメが低空飛行してたらしい」
「へぇ、そういうのでわかるんだ」
「面白いよな」
「うん。あ、そういえば」

気まずい沈黙を恐れて新しい話題をふりながら、どうしてこんなことになってるんだろう、と私は思った。

諸伏君と降谷君が付き合っているかどうかは定かではないけれど、諸伏君が降谷君を恋愛対象として好きなのは確かなのだ。

今だって彼は、小さな感嘆符やこちらを安心させるような笑顔を挟みながら、私の(つたな)い話を根気よく聞いてくれているが、本当なら、降谷君とこうして帰りたいんじゃないだろうか? 私なんかに傘を貸して、降谷君が私の友人と相合傘をすることには抵抗がないのだろうか?

そんなことをぐるぐると考えながら、どうでもいい話をしていると、降谷君が、雨音に負けないような張りのある声で「(ヒロ)!」と叫んだ。

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ひよこまる(プロフ) - 炭酸レモネード。さん» 炭酸レモネード。様、お久しぶりです! 最後までお付き合いいただけたことは勿論ですが、こうして数年ぶりにお話できてすごく嬉しいです(^^) 私自身、一時期はどうなることかと思いましたが、ハッピーエンドを迎えられて安心しております笑 本当に有難うございました! (11月20日 7時) (レス) id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
炭酸レモネード。(プロフ) - 完結おめでとうございます泣勘違いにドキドキハラハラでしたけどしっかり諸伏の想いが伝えれて良かったです笑お2人ともとても可愛くてニヤニヤが止まりませんでした! (11月20日 3時) (レス) @page39 id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまる(プロフ) - 名無しさんさん» 名無しさん様、ご感想ありがとうございます。文章も展開も褒めていただけるなんて、作者冥利に尽きます(^^) 頂いたお言葉を励みに、執筆を頑張りますね! 最近は本当に寒くなってきましたので、名無しさん様も、暖かくしてお過ごしください。 (2022年12月16日 1時) (レス) id: 39d9850ac3 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 文章が丁寧で、その上お話の展開にとっても悶えてしまいました。更新お待ちしております。寒くなってきましたので、どうぞご自愛ください。 (2022年12月15日 22時) (レス) @page24 id: be46fe9f9a (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまる(プロフ) - chiさん» ようやく私生活が落ち着いてきたため、隙間時間を見つけて更新したいと考えております。どうかお時間のあるときに、暇つぶし程度でも構いませんので、本作をお読みいただければ幸いです(^^)長文失礼いたしました。 (2022年12月7日 0時) (レス) id: 39d9850ac3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2019年8月9日 21時

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