【DC】そして、私は見てしまった【諸伏景光】

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あ諸伏君と降谷君が幼馴染だと知ったのは、去年、高校に入学して初めて迎えた九月の文化祭の頃だ。

あクラスごとに何かひとつ校舎内で出し物をするのが一年生の課題で、私達のクラスは、お化け屋敷をすることが決まっていた。

あ本番数日前の放課後、私と諸伏君を含む四人の実行委員と十人ほど残った有志たちで、教室の机を全て後ろへ引き、窓に貼る黒いゴミ袋を切り裂いたり、小道具の組み立てをしたりしていると、ふいに窓際できゃあっと歓声が上がった。

あびっくりして振り向けば、四人の女子生徒が、開け放った窓から顔を出し、ぎゅうぎゅうに押しあいながら、「降谷くーん！」と黄色い声をあげていた。

あ降谷君は、エネルギッシュな褐色の肌と輝く金髪をもつ、異国情緒ただよう美男子で、入学式では誰よりも目立っていた。体育館の舞台上で、堂々と新入生代表スピーチを読み上げる彼の姿に、女子生徒は皆(みな)色めき立ち、とびきり格好いい男の子が入学してきたと、わざわざ教室まで上回生が見に来るほどだった。

あしかし何を言われても、失礼にならない程度のそっけなさであしらう降谷君を前に、興味本位で話しかける人は目に見えて減っていった。

あそれに比例するように彼の人気も衰えるかと思われたが、そうではなく、“クールなところが素敵！”と噂されるようになっていたことは、遠目に見ただけでアイドルに会ったかのように華やぐ彼女たちの様子を見れば明らかだった。

あ外にいた教師に怒鳴られたのか、さんざん文句を言いながら顔を引っ込める女子生徒たちを見て、私もそろそろ作業に戻ろうと腰を伸ばせば、斜め前でもくもくとビニール袋を切っていた諸伏君と目が合い、お互いに苦笑した。

「相変わらずすごいね」
「昔からだよ」
「昔から？」
「オレたち幼馴染なんだ」
「そうなんだ」

あへぇという風に言ったものの、大して驚きはしなかった。

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