１０ ページ11
The tone of the bell heard
聞こえる鈴の音
ーーー
ーー
ー
「あ、そうですか。わざわざありがとうございました！」
僕は今ジキルさんと一緒に通りに来ていた
道行く人に手当たり次第に声をかけ、話を聞いている
「すみません！この近くで猫を見かけませんでしたか？」
有力な話は聞けないまま、時間は過ぎていく
ジキルさんは
何処にも行かず、すぐ近くのベンチに座って辺りを眺めていた
少しは気分転換になってるといいんだけどな…
それにしても、この通りでなら何かしらの情報が得られると思っていたけど…無理かもな…
「ジキルさー」
“もう帰りましょう”
僕はその言葉を飲み込んだ
視界の端に猫が見えたから
チリン チリン
鈴の音をさせながらあの角を横切った
ー 気がつけば僕の足は鈴の音を追っていた
音は真っ暗な路地に響いていた
聞こえる鈴の音を僕は追いかけた
細い道を走って 走って 走って
行き止まりの所に猫は座っていた
耳が後ろに跳ね返っている猫
僕が近づいて抱き上げると
にゃあ
と一言鳴いて、それっきりー
それから来た道を引き返した
暫くして路地を抜けたあとジキルさんが座っていたベンチに戻った
彼女はさっきと変わらずベンチに座っていた
そして僕と抱えている猫を見ると
「おせぇよどチビ」
と言って立ち上がり僕の目の前に来た
なぜか緩みそうな頬を押さえながら
「帰りましょう、ジキルさん」
今度こそ笑顔で僕はそう言った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫無み x他2人 | 作成日時：2017年6月5日 12時
