・ ページ10
me side
マイナスからスタートした書記長との関係は徐々に良くなり、今では書類整理を任せられるほどにまで発展した。前と変わらず、私にだけは無表情で冷たい対応ではあるが、それでも名前を呼んでもらえる回数は増え、それに反して怒られる回数は極端に減った。総統様や書記長以外の方とはあまり話せてないとはいえ、メイドや一般兵などから、昔よりも信頼を置いて貰えている自覚はある。
『…私、やればできるんだ』
苦手だからやらなかった。
得意なことしかやらなかった。
そんな、簡単な振り分けで生きていくことは難しい。
ましてや私は軍人、いつ死ぬかも分からない人生では、身を守る術を多く持っている方が生存率は上がる。一瞬の判断で生きるも死ぬも決まる世界に、私は身を置いているのだ。
『…約束の時間は、2時頃から』
今日は、外交官様とのお茶会に初めて呼ばれる日。
午前中に仕事を完璧に終わらせて、午後からは休養を頂いた。指定された時間に間に合うよう身なりを整え、幹部専用のテラスの場所を頭の中で確認する。
『…
この場所に来て1年は経つはずなのだが、面と向かって話したことは1度もない。外交官様は様々な国を飛び回り、私のような一介の補佐が会うタイミングなどありはしなかった。
それがどうだろう。
──あぁ、やっぱり。
(………楽しみ、だなぁ)
時間より早めに行こうとドアに手をかける。換気のために開けた窓から、すうっと入ってきた下午の風は、殺風景で無機物だらけの部屋の中、唯一彩りを添えてくれる、陽の光に輝く黄と橙の鮮やかな花弁を優雅に揺らす。
『…ふふ、』
ふと、鏡に映った少女の微笑み。
いや、少女とは言い難い年齢になってしまった彼女の顔は、なんとも淑やかな表情をしている。
以前の
──いや、でも。
『今はそんなこと、もうどうでもいい』
今の私が幸せなんだ。この選択が正しかったんだ。
──
『…さぁ、お茶会の時間だ』
服の皺を伸ばして、テラスへ向かう。
コツ、コツと鳴る革靴の音は、硬い絨毯の中へと沈んだ。
1382人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません!花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました! (2023年4月11日 8時) (レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Toki | 作成日時:2021年3月4日 7時