スノードロップが枯れるころ ページ36
ut side
｢...っ、て｣
あ、やらかした。
ぷつりと盛り上がってくる赤い雫を舐めとって、常備してある絆創膏を取り出す。乾燥気味な空気に肌は荒れ、薄い紙の端に触れただけで簡単に切れてしまう。
｢はー、面倒くさいなぁ｣
暖房の聞いた談話室。最近煙草のヤニが着いていたためにやり直しをくらった書類を書き直し、メイドが眠気覚ましにと淹れてくれた珈琲を飲んで、丁寧に書類を仕上げる。
｢あー終わった終わった。トンちおるかな｣
出すなら早い方がいいと書記長室へ歩を進め、ノックしてから部屋に入る。相変わらず机と睨めっこするトンちに書類を提出して、空っぽになっている"総統専用"の書類提出箱を見つめた。
｢なんや、俺グルちゃんより出すの早かったん｣
tn｢...あ？あー、そうみたいやな｣
──多分、
｢...やっぱり？｣
tn｢おん。多分オスマンとおるんちゃう？｣
｢...そか｣
新たに書類を貰って、ついでに少しばかりお小言も頂き部屋に戻る。換気のために開けておいた窓のせいで部屋は冷えきっており、ぶるりと寒さに身体が震えた。
｢はぁ...もう、2月終わるやん.....｣
机の上に書類を置いて、手持ち無沙汰になった手をぱんっと合わせる。カサつく皮膚を吐息で温めながら、曇り模様の空を窓から見つめた。
｢.....俺も会いにいこ｣
冷気が足元を掬う廊下を抜けて階段を降りれば、この寒さの中でも訓練に勤しむ一般兵の声。その中に混じるシッマやシャオちゃんの大声を背に、人気の少ない部屋の扉を開けた。
｢邪魔するでー｣
sn｢邪魔するなら掘られてー｣
｢いややぁそんなん｣
sn｢えー...割と本気なんだけどなぁ｣
声を潜めて医務室に入れば、カルテを持ったしんぺいさんが出迎えてくれる。絆創膏を巻いた指を隠して｢グルちゃんたちおる？｣と小声で尋ねれば、｢あっち｣と半ば予想していた場所を指さした。
sn｢飽きないねぇ2人とも｣
｢まぁ.....責任感じとるやろうから｣
遮光カーテンをそっと開ける。振り返ったマンちゃんに微笑んで、2人と反対側の椅子に座った。
｢綺麗な寝顔やね｣
os｢...せやな｣
痛々しいほどに真っ白な、首を隠す包帯。規則正しく浮き沈みする胸元と、骨と皮ばかりの華奢な身体。死んだように眠り続ける彼女の左手を、グルちゃんがそっと包み込んで。
gr｢.......｣
一言も発さずに寝顔を見つめるその横顔は、まるで父親のように優しい顔つきだった。
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ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません！花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました！ (2023年4月11日 8時) (
レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Toki | 作成日時：2021年3月4日 7時
