ストレリチアの名のもとに ページ32
me side
──ただいま
城下を抜けて、畦道を歩いて、舗装されていない土埃舞う道を進む。そうして見えてきた小さな村の端にある、歪んだ形の滑稽な家。鼠のせいで柱はボロボロ、建っているのがやっとのこの家が、私の全てだった。
──ただいま、母さん
立て付けの悪い扉を開けて、玄関で砂を払ってから、母がいつも座っていた暖炉の前にいく。足腰が悪くなった母は、畑を親族に譲り渡してから家を出なくなり、この小さな家をずっと1人で守り続けていた。
戦場で散った父の魂と、城で1人孤独に暮らす娘のことを想いながら、ずっと。
──母さん、Aだよ。帰ってきたよ
すっかり灰だらけになった暖炉。炭掻きもせずに放置されたままの空間と、母。
キコ、キコと音をだしながら揺れるロッキングチェアは、父が昔に作った母への贈り物。父の手に包まれるように眠っている母の体温は、しかしながら、数ヶ月前の雪積もる冬から止まっていた。
──母さん、ご飯たべようよ
そっと肩に触れる。無機物よりも冷たく、硬くなった骨と皮だらけの身体と、昼寝でもしているかのように安らかな死に顔は、どこまでも奇麗で、美しかった。
──母さん
触れている筈の、母の身体が消えていく。
指先の感覚が無くなり、積み木が崩れるように視界が乱雑に混ざり合う。段々と見えなくなっていく、私の大切なこの場所には、きっと、もう、戻っては来れないだろう。
《──来れて、良かった。例えこれが夢であったとしても、もう一度、会えてよかった》
父さんと、母さんの、子供でよかった。
──.....A
振り返った先に霞む、朧気な両親の姿。母さんを支えるように肩を持って、傍に寄り添う父がいた。
──母さん、父さん
遠くなっていく2人の姿に、涙で視界が奪われる。
──A、お前はやっぱり、俺の自慢の娘だよ
微笑む父の、泣きそうな顔。
──だから、お願いだ。
俺と、母さんの分まで生きてくれ。
こんな所で、自ら命を絶たないでくれ。
たとえ辛いことがあろうとも、いつかは報われる。
父さんと母さんがついてる。だから、だから。
──俺たちの所へ来るのは、まだやめなさい。
《.....っ、わたし、は.......》
──誰かに、愛されていたのだろうか。
あの場所で、あの軍で。
私のことを愛してくれた人は、
《.......いたの、かな》
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ぽてち(プロフ) - もう1人の私と私の会話で苦しくなりました。壊れてゆくのを現するのがお上手すぎて頭が上がりません！花言葉を知っていた私は見た瞬間奇声を上げながら号泣。人には得意不得意あって尊重するべきと学べる素晴らしい物語でした。有意義な時間をありがとうございました！ (2023年4月11日 8時) (
レス) id: b72c422986 (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - コメント❌小説⭕️ごめんなさい誤字ってしまいました (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - そして作者さん、とても感動して素晴らしい作品を描いてくださり有難うございます。素敵なコメントを書いてくれたあなたに幸あれ (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ビニール袋vll - ネコさん» 嫌いなら嫌いで自衛するべきです。わざわざここのコメ欄に書く必要はあるのでしょうか。下の方々のようにとても楽しんでいる方達もいます。そのようなアンチコメントは心の中でとどめておいてください。とても不愉快です。 (2022年12月2日 16時) (レス) @page42 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 人に酷いことしたのに幸せになる物語嫌い (2022年8月21日 17時) (レス) @page42 id: 0cd09c89d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Toki | 作成日時：2021年3月4日 7時
