狡猾な老狼 ページ31
me side
──あれから、数日。
痛む身体に鞭を打って、向かった先は懐かしい古巣。
グルッペンやトントンに止められはしたが、昔から回復力には自信があった。とはいえ幹部と全力で殺りあった身体は悲鳴を上げていて、護衛と称してグルッペンが着いてくるとわがままを言ったのを承知したのは仕方ないだろう。
gr「まだ足の傷も癒えてないのに」
『これくらい大丈夫だ』
gr「頭だって強く打ってるんだぞ。血が溜まっている可能性もあるとしんぺい神が...」
『お前はトントンの現身か?』
軽口を叩きながら馬に揺られること数刻。見覚えのある2本の枯れた木を前に馬を降り、カラカラになってしまった聖樹に触れる。
『...』
コンコンと、腐って中身が空になってしまったオガタマの門番たち。もう少しすれば幹が朽ちて崩れ去り、オガタマの子供たちが綺麗な萌葱の芽を生やすだろう。生命の息吹に感動した、いつかのひとらんの畑の時のような、不思議な感覚が胸に広がった。
gr「A、行こう」
『...あぁ』
オガタマの門を潜り、薄暗い一本道を歩く。躊躇いの無い足取りに心強さを覚えてそっと手を取れば、ぎゅっと繋がれ共有される体温。言葉も無く歩き続けて拓けた先で、懐かしい獣臭さが辺りを満たした。
険しい渓谷に、点々と見える黒い獣。その中でも一際大きな個体に向かい、名を呼んだ。
『──ヴァン。美しき黒狼の長よ。シュトルツの娘が会いに来た』
〈──来たか、A〉
ゆったりと歩いてくる、1匹の大きな大きな黒狼。
数メートル先で立ち止まり人間に姿を変えたヴァンは、物珍しいものを見るように私とグルッペンの手を見た。
va「...なんだ、結果は変わらなかったか」
『...お前は狡賢かった』
鋭い犬歯を覗かせて嗤う、老獪な獣。
ひたひたと、静かな怒気がふたつ満ち溢れる中で、波紋を作るように言葉を落とす。
『ヴァン、グルッペン。今日は過去の清算をしに来たんだ。無駄な殺意の向け合いで、この場を汚すな』
──アォーーーーン.......と、遠くで狼が吼えた。
『...あまり、リーベを怒らせるな』
2人の睨み合いに身を縮こませていた仔狼達が、崖の上からこちらを眺める狼の元へ集まる。慈しむように鼻先で触れ合う群れの元へ、私は1人駆け出した。
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(。・ω・。) - 子れは神ですか?神ですね(自己解決)ありがとうごさいますm(_ _)m (2021年12月29日 10時) (レス) @page38 id: 564be5b250 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - うおうおうおうおうおうおう……ッッッ(混乱)なんだこれなんだこれ…!ずっと更新待ち望んで見るぞーって思ったらめっちゃ一気に話出てるし尊いしgr氏の獣みすきだし、夢主おめでとうだし……ッッ!!ここが天国ですね(昇天) (2021年1月4日 1時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
Toki(プロフ) - おぼろどうふさん» ありがとうございますっっ! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - おかえりなさぁぁい!!待ってました! (2020年11月21日 19時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - Tokiさん» 困惑と思惑4、の最後の言葉、すごい鳥肌が立ちました。いい意味です!もう、最高ですか… (2020年9月30日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年7月24日 21時