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sha side
──身体が重い。
精神的な怠さを感じながら目を開けると、そこは自国よりも管理のなっていない地下牢。汚さに辟易しつつ首を動かすと、優雅に椅子に座って本を読む女がいた。
「...あら、お目覚めかしらね」
「...お前、誰やねん」
警戒心を露わに威嚇すれば、気にしないというように笑い立ち上がった女。そのまま柵の近くへと寄り、覗き込むように俺の顔を見る。
「私の名前なんて別に覚えていなくてもいいの。どうせ貴方は死ぬのだから」
ねぇ、そうでしょう?
──首を傾げ、笑いかける先にいたのは、やはり。
「...A」
『...』
掠れた声で呼び掛けると、光を失った烏羽色に射抜かれる。そこに居たのはグルッペンの幼馴染では無く、感情を削ぎ落とした人形のような姿だった。
「A、これ、どういうことや」
『...』
「...ふふ、残念だけど彼女は私の命令なしには話せないわ」
「は?」
心底楽しそうに笑う女の顔を、こんなにもぶっ潰したいと思ったことは無い。優越感に浸りながら微笑む女は、秘密事を話すように声を潜めた。
「今の彼女は私の従者。グルッペン・フューラーでは無く私に仕えているのよ。主の命はいつだって無視してはならないの。それが古来から続く、ωでのしきたりですからね」
「ω...、グルッペンとAの故郷やろ、それって。
.....まさかあんたも」
「ご名答!勘がいいのね、貴方」
年に合わない無邪気な声。俺にとってはイライラが溜まる他ない元凶そのものだが。
『...主、そろそろ時間です』
「まぁ、そういえばそうね。早く此方側に引き付けて、纏めてw国を葬りたいものだわ」
「お前っ、そんなこと出来るわけないやろ!!」
思わず叫べば、くるりと俺を射抜く瞳。
「...何も分かっていないのね。噂が立っていたでしょう?"新兵器が開発された"っていう」
「.....っ、まさか」
「うふふ、楽しみね。哀れな狂犬の片割れさん」
──すぐに、仲間を連れてきてあげるからね。
嘲笑とともに落とされた爆弾。
優雅に階段を登る女に、俺はただ叫ぶことしか出来なかった。
『...』
「っ、A」
縋るように見つめても、Aは何も返さない。
音もなく消えた姿の影を凝らしながら、何とか抜け出す手段は無いものかと牢屋の中を探索する。
──早くあいつらに、伝えなければ。
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(。・ω・。) - 子れは神ですか?神ですね(自己解決)ありがとうごさいますm(_ _)m (2021年12月29日 10時) (レス) @page38 id: 564be5b250 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - うおうおうおうおうおうおう……ッッッ(混乱)なんだこれなんだこれ…!ずっと更新待ち望んで見るぞーって思ったらめっちゃ一気に話出てるし尊いしgr氏の獣みすきだし、夢主おめでとうだし……ッッ!!ここが天国ですね(昇天) (2021年1月4日 1時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
Toki(プロフ) - おぼろどうふさん» ありがとうございますっっ! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - おかえりなさぁぁい!!待ってました! (2020年11月21日 19時) (レス) id: c248a8f0c7 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - Tokiさん» 困惑と思惑4、の最後の言葉、すごい鳥肌が立ちました。いい意味です!もう、最高ですか… (2020年9月30日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年7月24日 21時