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gr side
「.....好きだ」
耳元に唇を寄せ、とろりと甘い
その一言で、綺麗な頬を染め上げる無垢な姿。
固まったままの顔を見ようと覗き込めば、ふいと顔を逸らされた。
『イタズラはやめろ。心臓に悪い』
珍しく拗ねた姿を可愛らしくて、思わず声が出る。
惜しい温もりを手放して壁に寄りかかり、頬の赤いAを見る。
「俺は本気だゾ?
...お前の心も身体も全て、欲しいと思うくらいには」
──性別変えたのか?
パーティで冗談混じりに放った言葉。
もし本当に男になっていたとしても、俺はお前を想うだろう。ずっと昔、手を繋いで見上げた城。あの時夕焼けに映えたお前の笑顔を、俺は忘れずに憶えている。
...もし、もうお前が、自然に笑えないのなら。
家族を喪い、心にぽっかりと空いた穴が、まだ塞がっていないのなら。
(俺がお前を笑わせる。あの時と同じ、花が綻ぶ笑顔を。...2度とお前を、1人にはしない)
告白すらも無で受け止める顔を指で撫で、愛おしさを持って微笑みかける。貫かれた無言が、しっかりとした言葉で破られる。
『...なら、奪ってみろ』
火照った頬は、きっと風のせい。
挑戦的な物言いは、きっと暑さのせい。
先程より幾分か感情を含んだ女が、やれるものならやってみろと、俺の心を焚き付ける。
Aは、俺がどんな男かなんて知っている。
欲しいと思ったものは、何がなんでも手に入れる。
他人なんかになんて頼らない。
俺自身の手で、手に入れる。
だから──
「言ったな?では婚約関係を破棄し...1人の男として、お前のことを狙わせてもらおう」
過去に約束された
1から俺に惚れさせてやる。
心の底から、お前の幸せを願うから。
もう一度、あの笑顔を見たいから。
(それほどまでに、俺はお前に惚れている)
『愉しみにしているよ、グルッペン』
戦闘時に見せる、昏い微笑み。
ああ、その表情も堪らない。
(絶対に、逃がさない)
昼下がり、獲物を狙う蒼ひとつ。
窓から吹いてくる温い風が、黄金と紺青の髪を揺らす。
「覚悟しろ、A」
離すつもりなど、さらさらない。
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眠る猫 - 私は本当の事を言っただけですよ!!本当に面白くて、更新されてたら真っ先に見に行きますもん! (2020年6月4日 16時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - いやいやいや褒めすぎっすよ!思わず顔がにやけましたわありがとうございますっ (2020年6月3日 19時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - ととちゃ。さん» ちゃんとオリジナルフラグ、外れた様ですね!よかったです!!…にしてもこの作品、面白すぎるでしょ!?天才ですか!?もう、好きです!(は?) (2020年6月3日 18時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
ととちゃ。(プロフ) - 眠る猫さん、アドバイスありがとうございます!そう言って頂けるとものすごく嬉しいです!無理せず自分のペースで頑張りたいと思います! (2020年6月2日 16時) (レス) id: 077d8e943d (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - あと、この作品をとても楽しみにしながら待っていますので、無理しない程度に更新を頑張って下さいね! (2020年6月1日 21時) (レス) id: f146e9ce83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Toki | 作成日時:2020年5月23日 16時