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頭上で聞こえた声に、ガバッと頭をあげる。
「は、なにを?」
「素敵な恋愛」
なるせは少し笑って言った。
「ははは、なにその冗談笑える」
「こんなに優しくてかっこよくて趣味合う男これから出会わないよ?」
「どの口が言ってんだ、まずなるせにドキドキしたことないし絶対無理」
「それは、俺がドキドキすることしてないからだろ」
「そんなことしても、」
いきなりぐいと腰らへんを持たれ、近くに寄せられる。
ぴと、と頬にあてられる手が冷たい。
なにこれ、本当になに。
なんで、こんなことになってんの。
さらに、親指で頬を撫でる。
優しく、優しく。愛しいものを触るみたいに。
私を見つめる目もいつもと違って熱を持っている。
私は、このなるせを知らない。
「ドキドキするでしょ?」
「し、ないけど」
「ふーん」
「ちょっ、と」
「ん…」
まって、まってまって
だんだんと近づいてくるなるせに驚きすぎて声も出ない。
ぼーーーっと、する。
ちゅう、と唇が重なった。
10秒、いや5秒くらい。
その5秒で、私たちの7年間が壊れる。
唇が離れて、なるせを見つめる。空っぽの目で。
「酔ってる?」
「ううん」
知ってる。酔ってないことくらい分かる。
でも、酔ってるって言って欲しかった。
お酒のせいにしてほしかった。
「いくら冗談でも、これはダメでしょ」
「……」
「馬鹿にしてんの?」
目は合わない。下を向くなるせは何も言わない。
さっきまでのいつもの馬鹿な雰囲気はどこにもない。
冗談でしたー、お前の唇たらこみたいで思わずさ、とかお前の唇カサカサすぎてサハラ砂漠かと思ったわーとか。
そんなくだらない事言ってくれたらボコボコにして、ふざけんなよって言って許したのに。
なんでなにも言わないの。
「……帰る」
一言、それだけ言ってバタバタと家を出る。
久々に1人で歩く帰り道で、私は涙が止まらなかった。
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m - お話の構成が良すぎる!自身のストーカー被害の経験から女子高生を助けちゃって、、のところ読んでて楽しかったです。なるせと主人公のふざけた会話も本当にしていそうでドキドキしました♡ (2022年5月26日 13時) (レス) @page23 id: 365275f24a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2022年3月17日 0時) (レス) @page26 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
けい(プロフ) - 最高すぎました…本当にありがとうございます…! (2021年10月15日 19時) (レス) @page26 id: 26768e7c05 (このIDを非表示/違反報告)
な(プロフ) - 怜美さん» 嬉しいです〜(;_;)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年11月11日 22時) (レス) id: 9fdc00e698 (このIDを非表示/違反報告)
な(プロフ) - ビムロスの夜さん» ありがとうございます!! (2020年11月11日 22時) (レス) id: 9fdc00e698 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:な | 作成日時:2020年10月29日 17時