【短編集】氷上の王子と私【羽生結弦】 (ページ37)

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結弦の練習が終わり、私の所へやってくる
何食わぬ顔しちゃって…

『A、なんで今日僕のこと途中から観てくれなかったの?』

どストレートに質問が飛んできて肩が跳ねる
メドベージェワに嫉妬してました、なんて

言えるか!!!

｢別に、考え事してただけだよ｣

当たり障りない、よくある答えを口にしてみる

『へぇ…』

ニヤニヤ笑う結弦
もしかしてわかってて聞いてるの?

『じゃあメドベージェワのとこに言ってセーラームーンの話聞いてきてもいい?』

｢!?｣

みなさん、この人確信犯です

『いいの?行っちゃうよ?』

くすくす笑う結弦

嫌だ、行かないでよ

言葉にはならなかったけど、結弦のジャージの裾を引っ張るのが精一杯だった

『じぇらしーってやつ？』

まだくすくす笑う結弦にデコピンする
いてっとおでこをさする結弦はどこか嬉しそうだ

｢…話さないでなんて言わないよ、私もメドベージェワちゃん好きだし｣

結弦はまっすぐ私の言葉に耳を傾けている

｢でも…私も結弦と話したい｣

『話すだけでいいの?』

｢え？｣

急にどアップになる結弦の顔

気付けば結弦との距離 0センチ

リンクの氷が溶けるんじゃないかってほどの甘いキス

『大丈夫、僕にはAだけだから』

耳元で囁いて私に笑いかける結弦をみて
さっきまでメラメラと燃えていた嫉妬心が消えていく

｢…ありがとう｣

やっぱりこの人、王子様だ

メ『熱いわねぇ(笑)』

そのあと私たちの一部始終を見ていたスケートリンクにいた選手達にからかわれるのはまた別の話