見えてくるもの [リクエスト] ページ33
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Side. Yuzuru
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ソファーで規則正しく寝息を立てているのは僕の彼女
最近のAは素人が見てもわかるほどのハードスケジュールだった
朝僕が練習に行くよりも早く家を出てインタビューや収録、生放送、解説に赴き
スケート特集で世話になった人達との会食
現役を引退したAにとって少し厳しかったのだろう
『最近大変だったもんね』
さらさらの前髪を撫でればくすぐったそうにくぐもった声を上げる
そう言えばこんなにじっくり間近でAの顔見る機会あまり無いな
チャンスだ
僕は起こさないように顔にかかった髪を払ってAを見つめた
雪のような白い肌、長いまつ毛、小さく漏れる息
いつも美しい声を奏でる口、愛らしい唇
閉じられた瞳が開く時最初に映るものは僕であれと妙な独占欲が湧く
普段は気にしないところが良く見える
触れられないはずもなく僕は彼女の頬に手を伸ばす
すべすべで吸い付くようなこの感覚がたまらない
いつもこんな華奢な体をめいいっぱい使って、僕のいちファンとして頑張ってくれている
僕が嬉しい時は笑い、辛い時は泣き、わからない時は悩む
こんな健気な女の子この世のどこを探してももういないだろう
でもAはどうだろう
僕と付き合って本当によかったとおもってくれているだろうか
絶対王者と呼ばれる僕に押しつぶされて飽き飽きしていないだろうか
いくら世界を制したって
氷を降りれば僕もただの恋する男子
『…僕、ずっとAに僕の滑りを見ててほしい』
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作者名:星羽 | 作成日時:2018年2月20日 0時