【短編集】氷上の王子と私【羽生結弦】 (ページ22)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:488,501 hit

．ページ22

．

Side. Yuzuru

.

そっとベッドに下ろして隣に腰掛け、頭を撫でながらなに？と聞き返す

｢…ごめんね｣

『どうして？』

｢…私が風邪なんて…結弦に迷惑、かけちゃう…｣

辛そうに僕に謝るAを見て申し訳なくなる
そんなことないのに

『大丈夫だよ、ただ無理はしないこと』

優しく熱い頬を撫でると嬉しそうに擦り寄ってくる

可愛すぎる！！
いや、だめだ、落ち着け羽生結弦

彼女は今風邪なんだぞ…

｢…結弦…｣

あああそんな艶っぽい声で僕を呼ばないでくれ…

『なぁに？』

平静を装って答える

｢……好き…｣

『っ！』

…神様、これが僕の女神です…
普段はなかなか言ってくれない好きの言葉
このままキスしてしまいたい

でも確かに風邪を貰っては現役スケーターとしては一大事だ
いろんな仕事や大会に穴を開けるわけにはいかない

でもこんな可愛い彼女放っておける！？
放っておける訳ない…

急ぐ気持ちを抑えて僕もだよ、と笑顔で答える

だけどせっかく抑えた理性をAは破壊しかける言葉を発する

｢…ほっぺでいいから…ちゅーして…？｣

『え！？』

｢あ、ごめんなさい…違う、忘れて…｣

今なんて？
キスしてって？

Aは慌てて否定したけど…

頬でいい、と言うのはうつさないための理性の塊
キスして、と言うのは溶けきった本能だろうか

メンタルコントロールは大切だ
だけど、こんな可愛い彼女にそんなこと言われて黙っていられる男っているのかな

でもAは風邪だ
乱暴な真似はしちゃいけない

『ゆっくり休むんだよ、A』

そっと熱い頬に口付けを落とすと

嬉しそうに笑って、小さな寝息を立て始めた

…神様

僕の彼女、女神以上の可愛さです…