★立ち上がれと言われましても ページ2
ふと、目を覚ました。
いつから寝てたのか、記憶の中にはなかった。
また、うっかり120年寝てたりしないよね。
陽の光が苦手なせいか、地下の薄暗い部屋で過ごしていた僕は欠伸をしながら外に出た。
太陽も沈んでしまって静かな夜＿＿なんだか、やけに騒がしいな？
｢お前のラップに答えなんて要らねぇ
ワックのおまけはチャックしてどうぞ？｣
｢この程度なら チョコレイトでも食いながら
まさか 負ける気は無いね｣
人の声がしたので、姿は見せないでおこうと、影からこっそり様子を伺う。
ジメジメとした路地裏でどうやらラップバトル？をやっているみたいだ。
僕はとてもびっくりした。
いつの間に僕の家は地下から地表に出たんだろう？
そして、どうしてラップバトルで人間が血を流して吹っ飛ぶのだろう？
｢いちいち雑魚が自意識過剰だ
でしゃばってくんな、くたばってくんない？
俺様は左馬刻様だにわかはどきな
貴様の内蔵出回っていいんか？｣
白い髪の男は、動けなくなった相手を躊躇なく蹴りあげると、近くにいた男達に何か伝える。
そして退屈そうに踵を返した。
｢あ゛ぁ？てめぇ何見てんだよ｣
こっそりと様子を見ていた僕はしっかりと目が合ってしまった。
鮮血みたいな鮮やかな赤。
ゴクリと喉がなる。
｢聞いてんのか、オイ｣
つい見とれてしまったが、ドスの効いた声で我に返った。
慌てて焦点を合わせると、なんとも不機嫌そうに伸ばされた手が、そこまで迫っている。
もちろん僕は避け＿＿れそうになかったので、この場で最悪の手段を選んでしまった。
ﾊﾟﾝｯ
僕が彼の手を跳ねる、かわいた音が響いた。
｢あの、ごめん、なさい。僕、に触らな、いで｣
ガタガタと体が震えた。
相手は驚いたように目を丸くし、
｢いい度胸じゃねぇか……なァ？！｣
怒声と共にブォンと拳がふるわれた。
僕は体を逸らして避けると、眠りの魔法をかけようとした。
｢え、なんで……？｣
｢あ゛ぁ？ 何ぶつくさ血言ってんだよ！｣
呪文に間違いはない。
魔力も体を巡っている。
それなのに魔法は発動しなかった。
迫る拳を避けながら、何度も試していると、フラッと世界が揺れた。
この懐かしい感覚は魔力切れだろうか。
行き場のない魔力が大量に霧散したからかな。
嫌に冷静な頭でそう結論づけるのと同時に、体の力が抜けた。
起きたばっかなのに、僕はなん10年眠るんだろう。
次は短いといいな。
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作者名：なかさ | 作成日時：2020年1月16日 2時
