silent (ページ5)

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★×3 理由はないからページ5

私には理由がない。

彼女には理由がある。

殴られる理由、怒られる理由、愛される理由、

そして殺される理由。

とある昔、私は彼女の家に遊びに行った。

高級感あるグラスに注がれたものは、赤いジュースだった。

私にはわからない名前の飲み物をサラサラと説明する彼女は、憎らしかった。

ねぇ。何でそんなことするの？

そう聞くと、さぁ？

と簡単に返される。

そして、あなたと同じかもね。という。

意味が分からなかった。

あんなふうにしていて、私のことを羨ましいわけがない。

だがそれが分かったのはあまりに唐突だった。

ある夏の日、屋上に呼び出された。

手を引かれなんとなく、意識が遠くなっていった。

もうろうとする私に、彼女は語った。

赤いジュースが私の母の血だったこと。

自分が食人種であること。

そして私が血を分けた姉妹だということ。

それを知らなかった私が憎かったこと。

私は声が出なかった。

そのままでいて、いつの間にか目の前に彼女が横たわっていた。

私には理由がない。

だから、目の前にある者が彼女のあるべき姿だと思った。