警察学校六人。〔番外編 3〕 (ページ9)

今日:5 hit、昨日:12 hit、合計:40,821 hit

109 ・その本は。ページ9

「優作さん」

「おや、Aさん」

沢山の本が壁を埋めている部屋のただ一つある書斎机、椅子。

「随分と遅くなってしまいました」

そこに座った彼へ近付く。

「この本、お返しします」

彼に、その本を差し出した。

「思い出しました」

「あなただったんですね(・・・・・・・・・・)」

そう。僕にこの本を渡したのは彼。

『貴方は？』

『私は工藤優作』

その本の著者であり、物語の人物達に命を吹き込んだひと。

主人公は孤独な"ひと"。性別も、性格も、家族構成も、何も明かされていない、ただ孤独と書かれた"ひと"。

この本は、その"ひと"が人生で初めての"疑問"をもつはなし。

僕が18の頃。

彼はあの日、突然僕の前に現れ、僕にこの本を渡し去って行った。

「酷いものだ、と釘を刺したが、、、、どうだったかな」

彼はこの前と同じようににこりと笑った。

「ええ＿＿＿＿＿」

「＿＿＿＿とても、素晴らしいものでした」