48 五本の矢。 ページ4
水景side。
「マサさんが、事、」
そこまで言って、湊は自分の口を手で覆った。
「怪我は？無事なんですか？」
「すまん、、、俺も、詳しくは分からねえんだ、、、ていうか、知らせてくれた蓮も、まだ病院には着いてなかったみてえで、、、」
「これから県大会に出場するお前さんたちに伝えるかは、正直迷った、、、だが雅貴のヤツ、出る前に、うちの店にこんなものを注文していてな」
中崎さんが少し震える手で差し出したのは、緑色の鉢巻。
「！」
「鉢巻、、、！」
「俺たちに？」
「意気地のない自分の背中を押してくれた礼だと、、、」
「マサさん、、、」
「俺には、これを渡さない選択肢も、事故の事を知らせずにこいつを渡す選択肢もなかった、、、だから、正直に言わせてもらった、、、すまん」
「いえ、ありがとうございます。知らせてくれて。後に知らされた方が、ショックが大きかったと思うから、、、」
私は心を落ち着かせて、中崎さんへそう言った。
「そう言って貰えると助かる、、、」
中崎さんは、私へ鉢巻を手渡した。
「皆」
竹早、小野木、如月、山之内、梨可、ゆうな、乃愛と、その鉢巻を渡す。
私は竹早に湊の分の鉢巻を渡した。
竹早は意味に気が付いたみたいで、優しい面持ちで湊の前に膝を着いた。
「湊」
「俺の、せいだ」
！
「無茶なのは、分かってたのに、、、俺が、行けって言ったから」
言葉と事実が繋がると、その事実を、言葉を放った本人が起こしたような気持ちになるのは、日本人独特の思考らしい。
決して湊のせいでは無いのに。
「俺が無理やり」
「俺がっ！」
ﾊﾟｼ
竹早が、湊の頬を手で挟む。
「それは、ダメだ」
「ダメだよ。湊のせいじゃない」
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作者名：co2 | 作成日時：2023年7月2日 23時
