笑う顔に矢立たず。2【ツルネ】 (ページ10)

今日:33 hit、昨日:29 hit、合計:28,138 hit

56 ・ページ10

二階堂side。

「永亮」

「、、、落ち着けって言ってるよね。多分、連絡先は君の叔母さんだろ。焦って動くなとも言われたんじゃないかな」

静かだが、人に口を開かせないような冷たさのある声で、Aは言った。

「マサさん。頼める？」

俺の頬をその冷たい手で包んだまま、風舞のコーチに顔を向けた。

「！ああ」

・

水景side。

「お前まで付き合わせて悪いな、、」

「いえ、俺が昔事故にあって暫く入院していた所なんです。案内は任せて下さい」

マサさんに頼んで車を出してもらうことになり、現在は高速道路を通って、病院へと向かっている。

ちらりと二階堂のへ目を遣ると、フードを被り、沈んだ表情で俯いていた。

「、、、、その叔父さんが、君の師匠になるのか？二階堂君」

「師匠じゃない。恩人だ」

「叔父さんが居てくれたから、俺は親父みたいなクソにならずに済んだんだ。なのに何でこんな、、、叔父さんばっかり辛い目に、、、」

「西園寺にも蔑ろにされて、、、病気も悪くなって、、、」

「！、、、西園寺先生が？」

「ええそうですよ。、、、昔、流派を変えるのも厭わない覚悟で弟子入りを懇願したのに受け入れて貰えなくて」

「その後叔父さんは体を壊してしまった。今じゃほんの数本引いたら、もう精一杯って状態になってしまって、、、」

私は自分の手首を握りしめた。