47 ・ ページ1
水景side。
「おかえり、二階堂。夜の海は綺麗だった？」
旅館の入口。私は彼を待っていた。
「、、、、、」
「そんな怖い顔しないでよ。ねえ、君と話をしたかったんだ」
いつものように目を細めて、唇にできるだけ自然に見えるように微笑を漂わせる。
「アンタの言葉なんて何も聞きたくない」
やっと口を開いたと思えば、こんな言葉だ。びっくりしてしまうね。
「じゃあそこで聞いてて。私が勝手に話すから」
二階堂は眉を寄せているが、なんだかんだでそこにとどまってくれている。
「君さ、西園寺先生を恨んでる？」
「、、、、」
無言は肯定の意。
「、、、私が西園寺先生に憧れている、ってことは離して喋るつもりだよ」
「二階堂。君は斜面に執着しているよね。茂之さんの射に憧れて弓を始めた君だ。それは仕方ないことかもしれない」
「、、、君が西園寺先生や湊、藤原を恨む理由は、茂之さんが弟子入りを懇願しても受け入れて貰えなかったから？」
そこまで言うと、二階堂は勢いよく私の胸ぐらを掴み上げた。
「アンタは何も分かってないんだな、、、！！」
「うん。分からないから聞いてる。教えて欲しいんだ。君を変えた出来事たち、全て」
真っ直ぐに二階堂の目を見る。指先が冷たいのが自分でも分かる。
怖いのか、目の前の男が。
私は、胸ぐらを掴む二階堂の手に優しく触れて、その手をゆっくりと下ろした。
困惑と怒りが入り交じっている二階堂の目。
「言わないと分からない。人間だから」
「、、、、ごめんね、二階堂」
こんなやつで、本当にごめん。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：co2 | 作成日時：2023年6月12日 23時
