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水景side。
「でも、どうして急に?」
淹れてくれたコーヒーが波を立てる。
「、、、茂幸さんの体調が心配だったのと、、、二階堂のことで」
茂幸さんは何かに気付いたように、視線を上げた。
「永亮?」
「はい。先日の地方大会、私の学校の男子が団体戦で出たのですが、そこに二階堂の学校も出ていて」
「何故、二階堂はあんな射を?射型は綺麗で、かけほどきだってできる凄い弓引きです。でも、彼自身の気持ちはあまり理解できなくて」
「、、、すまないね。俺も、アイツが斜面に拘っているってことしか分からないんだ」
「やっぱり、斜面に、、、」
またぎり、と手に力が入る。
「怒っている」
「彼は、斜面も彼も捨てた私に」
「Aちゃんは、何も捨てたつもりは無いんだろう?」
「、、、勿論」
喉の奥から低い声が出て、茂幸さんは少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「遅気はどうだい?」
「はい、無事治りました。つい最近でしたけど」
遅気。
中学三年の中盤辺りから、高校二年の終盤辺りまでかかっていた。
手と矢がくっついたみたいに離れなくて、恐怖で手が震えた。もう二度と経験はしたくない。
「なら良かった。Aちゃんは素晴らしい弓を引く。また見せてくれよ」
「、、、はい。ありがとうございます」
それからはなんでもない会話をして、時が過ぎていった。
二階堂のこと、二階堂から聞く辻峰のメンバーのこと、私の学校のこと、私の仲間のこと。
「今日はありがとうございました。久しぶりにお話し出来て楽しかったです」
「いや、こちらこそ」
玄関の前でそう会話を交わす。
「Aちゃん」
「はい」
「永亮、今はあんなだけど、昔からいい奴なのはAちゃんも知ってるだろうし、変わってないから。気を悪くしないでくれ」
「あははっ、大丈夫ですよ。生意気なとこも、昔は見られなかったから、逆に可愛くて」
そうして茂幸さんのお家からお暇し、そこら辺を適当に歩いて駅へ向かうことにした。
ドンッ
「わ」
「あ、すんませ_____」
「_____あれ?風舞の、、、」
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co2(プロフ) - 旭さん» ありがとうございます!!拙い文ですが、引き続き見てやってください!! (6月12日 18時) (レス) @page47 id: 501b79ea4d (このIDを非表示/違反報告)
旭(プロフ) - ツルネの作品、少ないから嬉しいです!続きがすごく気になります。 (6月12日 17時) (レス) @page47 id: c736327d44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:co2 | 作成日時:2023年6月10日 14時