妖しげ儚げ裏世界 (ページ5)

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裏世界の裏事情―参― ページ5

『……事件続き……ねぇ……』

「だって、そうじゃないですか
先週だって近くの横断歩道で大事故あったし」

横断歩道の事故、と言うのは先週起きた事件だ

これもまたいきなり信号が点滅、消滅を繰り返して被害がどんどん大きくなり

結局何人かが死亡した、とニュースで言っていた

原因は未だ判っていない

「警察も大忙しみたいですよ
事件続きでその後始末に追われてるって」

『だろうなァ』

ぼそっと呟いた

そして違和感を感じる

何だ……？この変な感じ

何か、こう

まるで全く判らない意味不明な難問を出されているような

モヤモヤ感

数秒考えて気がついた

(あぁ、そっか"同じ"なんだ)

俺が最近見続ける夢を最初に見た日と立て続けに起こるこの事件が初めて起こった日が

"一緒"、だ

(まさか、シンクロしてるとか……)

って、いやいや

『まさか、なぁ』

思い過ごしもいいところだ

んな阿保な事あるわけないのに

「先輩……？どうかしたんですか？」

見ると奉日本が下から俺を除き込んでいた

『あ、いや、何でもない。気にするな』

「ふーん、まぁいいです。それよりつきましたよ」

奉日本に言われ、上を見上げる

超高層ビルが密集するビル街の中に堂々と立っている(多分)凡(およ)そ180メートルのビル

それが俺達の勤めている会社

自慢じゃないけど結構な大手かもしれない

「あぁでも、ちょっと覚悟した方がいいかもしれないですね」

『は？』

「事故があったとはいえ大遅刻ですよ、俺ら」

『……』

さっき感じた悪寒とはまた違う物を感じる

それはあの"鬼上司"に対する恐怖

(うわっ……鳥肌たってる……)

因みにそれは同じ部署の奉日本も同様である

「ははは、獅子王さん怒ってますよね……」

『絶対な』

"例えどんな事があろうとも遅刻厳禁！"

そんな事を豪語する上司に遅刻をしたなどと言えばクビなんてまだまだ甘っちょろい

ましてや俺は奉日本と違い、事故の被害にあっていない

死ぬのは確定したであろうか

そんな事をぶつぶつと考えていたらいつの間にかドアの前に立っていた

まるで公開処刑前のドアのようだ

「先輩……開けてください」

『嫌だ、お前が開けろ』

「嫌ですよ！先輩でしょ！？此処は年長が！」

『同い年だろ！』

「でも先輩でしょ！」

何とも底レベルな争いである

周りから白い目で見られている気がする

だがその瞬間レベルの低い争いに終止符を打つ凛とした声が聞こえた